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書誌情報

Vol.66 No.2 March 2018

総説

非淋菌性尿道炎の第一選択薬に何を選択すべきか

濵砂 良一1, 2)

1)産業医科大学医学部泌尿器科
2)新小倉病院泌尿器科

要旨

 非淋菌性尿道炎(non-gonococcal urethritis:NGU)は,淋菌が検出されない尿道炎で,多くの微生物が原因となる。わが国ではChlamydia trachomatisの検出率が最も高く約半数の症例から検出される。次いでMycoplasma genitaliumの検出頻度が高く,15~25%程度のNGU症例から分離される。わが国では,NGUに対してC. trachomatisに対する治療を行ってきた。C. trachomatisはマクロライド,テトラサイクリン,ニューキノロン薬に対する感受性が高く,NGUに対してもこれら3剤が頻用されている。近年,M. genitaliumの薬剤耐性が顕著となっており,治療困難なNGU症例が増加している。
 クラミジア性尿道炎に対する臨床研究では,上記3剤はすべて有効であった。耐性株の報告はあるものの,世界的には蔓延しておらず,C. trachomatisの治療効果は良好である。これに対してM. genitaliumは治療が困難となっている。もともとM. genitaliumはazithromycin(AZM)に良好な感受性を示し,臨床効果も良好であった。しかし,AZM治療失敗例が報告され,マクロライド耐性株が分離された。マクロライド耐性M. genitalium株の耐性機序は,23S rRNAのdomain Vのpoint mutationによる。同じ遺伝子変異をもつM. genitaliumは世界中から検出されており,わが国でも40%以上のM. genitaliumはマクロライド耐性である。マクロライド耐性M. genitaliumには,moxifloxacinやsitafloxacin(STFX)が有効であるが,近年,これらのニューキノロンによる治療失敗例が報告されており,治療が非常に困難となっている。
 NGUに対する治療において,マクロライド耐性M. genitaliumを考慮すると,AZMをこれ以上第一選択薬にはできないと思われる。C. trachomatisにはテトラサイクリンも有効であり,M. genitaliumに対してはAZMとdoxycycline(DOXY)の有効率はともに低い。しかし,AZMに対する耐性化を抑えるために,NGUの第一選択薬をテトラサイクリン(DOXY 200 mg/日 7日間またはminocycline 200 mg/日 7日間)とし,無効例にニューキノロン,わが国ではSTFX 200/日 7日間以上を使用することを提唱したい。しかし,わが国ではM. genitalium感染症に対する検査,治療に保険適用がないこと,テトラサイクリンのなかでもminocyclineの臨床試験がないこと,テトラサイクリンの副作用を考慮する必要があること,STFX耐性M. genitaliumに対して治療法が確立していないなど,多くの問題が残る。

Key word

non-gonococcal urethritis, C. trachomatis, M. genitalium, azithromycin, doxycycline, minocycyline, sitafloxacin

別刷請求先

福岡県北九州市八幡西区医生ケ丘1-1

受付日

2017年10月10日

受理日

2017年12月7日

日化療会誌 66 (2): 173-184, 2018