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書誌情報

Vol.66 No.2 March 2018

総説

外来診療における耐性菌問題と経口抗菌薬の適正使用

中浜 力1), 村谷 哲郎2)

1)中浜医院
2)(株)キューリン

要旨

 外来耐性菌問題の主対策が抗菌薬の適正投与であることは論を待たないが,現在では一部の耐性菌では分離率低下が認められるものの全体的には満足できる状態ではなく,むしろ新たな耐性菌の対応に追われている現状である。ここ10年間の耐性菌動向を見ると,ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)は外来株で減少している。Levofloxacin(LVFX)耐性肺炎球菌は外来ではほぼ分離されないが,成人・高齢者入院株では10年前より平均25%の高分離率が続き,一部の高齢者医療施設では院内感染も確認されている。今後は高齢者施設での耐性菌サーベイランスや院内感染対策を強化し,将来の多剤耐性肺炎球菌の顕性化を阻止するための監視が必要である。
 β-ラクタマーゼ非産生ABPC耐性(BLNAR)インフルエンザ菌は増加しているが,BLNARを含めLow-BLNAR,β-ラクタマーゼ非産生ABPC感性(BLNAS)インフルエンザ菌の分離頻度は地域内の全患者層で近似し,地域での耐性遺伝子の拡散もAntimicrobial Resistance(AMR)問題の一因であると理解される。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は,小児では分離率は低く,成人・高齢者では50%~70%と高いが,10年間の分離率には大きな変動はない。基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生(ESBL)大腸菌は,全患者で増加しており,現在は外来で20~30%,入院では40%を占めている。今回の検証では,すべての耐性菌種で開業医株と病院外来株の間で,耐性率やその経年的変化に大きな差がなかったことは特筆すべき結果であった。
 臨床医への適正使用への意識調査では,以前よりも遵守する意識は高くなっているが,なお不十分であり,今後も開業医,勤務医ともに啓発活動を進める必要がある。患者側の盲目的な抗菌薬信奉は現在も非常に強く,国民への啓発教育は最優先課題と考える。臨床医の長年の処方習慣の変更は難しいとはいえ,多くの臨床医は抗菌薬適正使用への処方変更の重要性を理解しており,今後,AMRアクションプランが実施された場合には早期からの改善効果が期待される。

Key word

antimicrobial resistance, outpatient, appropriate use, oral antimicrobial agents, action plan

別刷請求先

大阪府大阪市旭区中宮2-15-3

受付日

2017年10月2日

受理日

2017年12月25日

日化療会誌 66 (2): 185-202, 2018