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書誌情報

Vol.66 No.4 July 2018

総説

肺炎の原因菌の診断法の進歩

野口 真吾1), 迎 寛2)

1)産業医科大学医学部呼吸器内科学
2)長崎大学医歯薬学総合研究科医療科学専攻呼吸器内科学(第二内科)

要旨

 肺炎診療においては原因菌の正確な情報が重要な因子であるが,喀痰培養を中心とした従来の原因菌検索では,肺炎の真の原因菌かどうかを判断することは難しい。また,原因菌の迅速診断法の発展に伴い,こうした培養法に加えて,イムノクロマト法を用いた抗原検出や遺伝子検査も保険診療のなかで行うことが可能となったが,これら検査法の利点は特定の菌種に限定される。いっぽう,近年では,大量の塩基配列を短時間で解析可能である次世代シークエンサーの出現により呼吸器疾患の下気道細菌叢に関する報告が散見されるが,われわれの施設では,サンガー法にクローン・ライブラリー法を組み合わせることにより,市中肺炎,医療介護関連肺炎,院内肺炎患者の気管支洗浄液の細菌叢の検討を行った。その結果,従来から知られている原因菌に加えて,口腔内レンサ球菌や嫌気性菌がこれまでの既報と比較しより重要な役割を果たしている可能性が示された。また,口腔内レンサ球菌は,高齢者,全身状態が不良な患者において,より多く検出される可能性が示唆された。さらに,近年原因菌であるか否かが議論されているMRSAや緑膿菌などの耐性菌については,細菌叢解析の結果,培養法ではこれらの菌種の原因菌としての関与が過大評価されている可能性が示唆された。

Key word

pneumonia, causative pathogen, cultivation method, clone library analysis

別刷請求先

福岡県北九州市八幡西区医生ヶ丘1-1

受付日

2018年1月31日

受理日

2018年2月6日

日化療会誌 66 (4): 483-488, 2018