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書誌情報

Vol.66 No.4 July 2018

原著・臨床

MRSA感染が疑われた発熱性好中球減少症の2次治療に対するDaptomycinおよびLinezolidの有効性・安全性に関する後方視的研究

櫻井 紀宏1, 3), 中村 安孝1), 川口 博資1, 3), 山田 康一2, 3), 永山 勝也1), 掛屋 弘2, 3)

1)大阪市立大学医学部附属病院薬剤部
2)同 感染制御部
3)大阪市立大学大学院医学研究科臨床感染制御学講座

要旨

 発熱性好中球減少症(FN:febrile neutropenia)治療において薬剤耐性グラム陽性菌感染が疑われる状況下等では抗methicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)薬としてグリコペプチド系抗菌薬(GPs)の使用が推奨されている。しかしながら,GPs継続不可時のFNに対する2次治療として,daptomycin(DAP)やlinezolid(LZD)の有効性を検討した報告はない。そこで今回,GPs不応性のFNに対する2次治療薬としてDAPとLZDの有効性と安全性について比較検討した。
 2010年1月から2016年12月の期間に大阪市立大学医学部附属病院でFN治療に対してGPsが投与された患者のうち,効果不十分等の理由でDAPまたはLZDによる2次治療が実施された症例を対象とした。診療録より患者背景,臨床検査値,バイタルサインの推移,解熱効果,投与終了30日後の生存率,臨床効果,細菌学的効果について後方視的に調査した。対象症例は,DAP群20例,LZD群13例であり,患者背景,投与期間,前治療で使用されたGPsおよび投与期間に有意差は認められなかった。両群とも投与終了時の臨床効果や投与終了30日後の生存率に両群間で有意差は認めなかったが,投与開始後4日目までの解熱効果がLZD群で有効率81.8%とDAP群の有効率31.3%と比較して有意に高いことが確認された。有害事象が原因による投与中止例が両群とも1例ずつに認められたが,いずれも軽微で重篤な副作用は確認されなかった。
 本検討からGPsの継続が困難なFN症例に対してLZDおよびDAPはどちらも治療選択肢の一つとしてなりえる可能性がある。特にLZDにはFNのような好中球数の減少した病態に対しても抗炎症作用が発揮され,早期の解熱効果が得られると考えられる。

Key word

daptomycin, linezolid, efficacy, safety, febrile neutropenia

別刷請求先

大阪府大阪市阿倍野区旭町1-5-7

受付日

2017年8月3日

受理日

2018年2月14日

日化療会誌 66 (4): 504-512, 2018