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書誌情報

Vol.66 No.6 November 2018

総説

リケッチア感染症の診断と治療~つつが虫病と日本紅斑熱を中心に~

田居 克規1, 2), 岩崎 博道1)

1)福井大学医学部附属病院感染制御部
2)福井大学医学部病態制御医学講座内科学(1)

要旨

 つつが虫病は,病原リケッチアであるOrientia tsutsugamushiを保有する小型のダニ(ツツガムシ)の幼虫がヒトを刺咬して感染する。O. tsutsugamushiは血清学的に多様性を有し,わが国ではGilliam,Karp,Katoの標準3型に,近年報告例の増加したIrie/Kawasaki,Hirano/Kuroki,Shimokoshiの3型を加えた6型に分類される。わが国における届け出患者数は年間おおよそ400~500例で,発生地域は北海道を除く全国に及んでいる。発症時期はツツガムシの活動時期に一致し,秋~初冬または春~初夏に多発する。本症は感染症法に基づく全数届け出の四類感染症に分類されている。
 日本紅斑熱はRickettsia japonicaを保有するマダニの幼虫に刺咬されて感染する。2015年は215例,2016年は275例,2017年は337例の報告があり,近年は増加傾向にある。発症時期はマダニの活動時期に一致し,4~11月に発生し夏から秋に多い。また,発生地域としては主に関東以西の比較的温暖な太平洋沿岸に多いが,近年北上を続けている。さらに最近ではR. heilongjiangensisR. helveticaおよびR. tamurae等の新種の病原体による感染症の存在が注目され,わが国の紅斑熱群リケッチア症の多様化が進んでいる。本症も感染症法の四類感染症に分類されている。
 つつが虫病の治療薬としてテトラサイクリン系薬が第一選択薬とされ著効するのに対し,日本紅斑熱ではその有効性が十分ではないことが経験され,つつが虫病より重篤化しやすく,死亡例も散発しているのが現状である。

Key word

rickettsiosis, tsutsugamushi disease, Japanese spotted fever, tick-borne disease

別刷請求先

福井県吉田郡永平寺町松岡下合月23-3

受付日

2018年4月5日

受理日

2018年5月9日

日化療会誌 66 (6): 704-714, 2018