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書誌情報

Vol.66 No.6 November 2018

原著・臨床

基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生Escherichia coliを原因菌とする尿路感染症リスク因子の探索

橋本 麻衣子1), 瀬角 りほ1, 2), 三村 享1, 3), 春日 恵理子4), 松本 剛4), 本田 孝行4), 濱本 知之2), 山折 大1), 大森 栄1)

1)信州大学医学部附属病院薬剤部
2)昭和薬科大学臨床薬学教育研究センター
3)信州大学医学部附属病院臨床研究支援センター
4)同 臨床検査部

要旨

 基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生菌の検出数は近年増加傾向にあり,尿路感染症に対する抗菌薬選択の際にはESBL産生菌を考慮する必要性が高まっている。これまでに,ESBL産生Escherichia coli検出のリスク因子についての報告はあるが,治療対象症例に絞って検討した報告は少数例での結果のみである。そこで,本研究では,信州大学医学部附属病院に入院した患者の中で有意な細菌尿(105CFU/mL以上)が検出され解析対象となったE. coliを原因菌とする尿路感染症患者299例を対象に,ESBL産生E. coliによる尿路感染症のリスク因子について後方視的に検討した。その結果,ESBL産生E. coliが検出された患者は37例であった。多変量ロジスティック回帰分析を行った結果,男性(オッズ比2.579,p=0.029),過去3カ月間の抗菌薬使用歴(オッズ比7.245,p=0.010)および抗真菌薬使用歴(オッズ比5.296,p=0.012)が有意なリスク因子として見出された。さらに,抗菌薬および抗真菌薬をそれぞれ系統別に分類して解析した結果,セフェム系薬(オッズ比2.902,p=0.011),スルファメトキサゾール・トリメトプリム合剤(オッズ比6.807,p=0.002)およびトリアゾール系薬(オッズ比4.826,p=0.029)の各使用歴がリスク因子として示された。以上の結果から,これらのリスク因子を有する尿路感染症患者には,ESBL産生E. coliが原因菌である可能性を念頭に置き,抗菌薬を選択する必要があると考えられた。

Key word

extended-spectrum β-lactamase, Escherichia coli, urinary tract infection, risk factor

別刷請求先

長野県松本市旭3-1-1

受付日

2018年2月1日

受理日

2018年7月5日

日化療会誌 66 (6): 749-757, 2018