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書誌情報

Vol.66 No.6 November 2018

短報

静注用免疫グロブリン製剤のPanton-Valentine leukocidin中和抗体価に関する検討

田中 純1), 平山 文博1), 柳瀬 さゆり1), 宇野 修正1), 中江 孝1), 上園 昭人1), 花木 秀明2)

1)日本血液製剤機構中央研究所
2)北里大学感染制御研究センター

要旨

 Panton-Valentine leukocidin(PVL)は,Methicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)を含む黄色ブドウ球菌が産生する生理活性の強い毒素である。一方,静注用免疫グロブリン製剤(IVIg)は,毒素中和作用が認められている数少ない薬剤の一つであり,われわれはこれまでの研究において本邦で製造されたIVIgがヒト血液中においてもPVLの細胞傷害活性を中和することを示している。しかしながら,世界各地で製造販売されているIVIgは,原料血漿はもちろん製造方法も異なることから,完全に同一の製剤とはいえない。そこで今回われわれは,製造年代または製剤の違いにおけるIVIgのPVL中和抗体価の比較を行った。IVIgは,国内外で販売されているインタクト型液状製剤を使用した。加えて,年次推移の検討においては,1990年から2015年までに本邦で製造された製剤(18 lots)を使用した。PVL中和抗体価は,二倍階段希釈法により算出した。その結果,測定したすべてのIVIgが高値のPVL中和抗体価を示した。また,製造年代および製剤によって,その抗体価に顕著な違いは認められなかった。これらのことから,PVLに起因する重症感染症に対して,IVIgは製剤間の差異なく抗菌薬療法の補助的作用が期待できる。

Key word

intravenous immunoglobulin (IVIg), Panton-Valentine leukocidin (PVL), neutralizing antibody titer, antitoxin, MRSA

別刷請求先

神戸市中央区港島南町1-5-2 神戸キメックセンタービル8階

受付日

2018年4月12日

受理日

2018年6月14日

日化療会誌 66 (6): 758-761, 2018