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書誌情報

Vol.67 No.1 January 2019

総説

高齢者肺炎の治療と予防

茂呂 寛1), 塚田 弘樹2)

1)新潟大学医歯学総合病院感染管理部
2)新潟市民病院呼吸器/感染症内科

要旨

 日本呼吸器学会による成人肺炎診療ガイドライン2017が策定され,市中肺炎,医療・介護関連肺炎(NHCAP),院内肺炎の診療における新たな指針が示された。高齢化社会が進む中で,高齢者の健康の維持,中でも肺炎への対応は重要な課題となっているが,高齢者肺炎とNHCAPは,誤嚥や耐性菌の関与という点で大きくオーバーラップしており,NHCAPに対する治療の考え方が,高齢者肺炎に適切に対処するうえで参考となる部分が多い。新ガイドラインにおけるNHCAPの診療の流れとしては,まず背景のアセスメントを行い,反復性誤嚥性肺炎のリスクがあり,かつ終末期や老衰の状態である場合は,患者本人や家族と十分に相談したうえで,個人の意志やQOLを考慮し,治療方針を決定する。積極的な治療が必要と判定された場合,敗血症の有無,重症度(A-DROP)が高いかどうか,耐性菌リスクの有無,の3点について評価する。いずれかが該当する場合,初期治療として広域抗菌薬を選択し,経過とともに全身状態を確認し,可能であれば段階的に狭域の抗菌薬への変更を考慮する。いずれも該当しない場合は,初期治療としては狭域の抗菌薬が選択可能である。その後の経過と情報の蓄積を受け,原因菌判明時には標的治療に移行する。また,ひとたび高齢者が肺炎に罹患した場合,再発や再入院,さらなるADLの低下や認知機能の低下など種々の問題が懸念され,ワクチン接種,口腔ケア,嚥下リハビリテーションなど,エビデンスに基づいた肺炎発症の予防は重要な課題である。

Key word

pneumonia, community acquired pneumonia, aspiration pneumonia, guideline

別刷請求先

新潟県新潟市中央区旭町通1-754

受付日

2018年4月27日

受理日

2018年7月9日

日化療会誌 67 (1): 1-12, 2019