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書誌情報

Vol.67 No.1 January 2019

短報

バンコマイシン塩酸塩の血中濃度トラフ値が高値となるリスク要因

藤井 哲英1, 3), 北川 誠子1, 3), 萱 智史1), 隅田 英幸1), 土井 佳恵1), 勝村 登美子1), 二宮 洋子1), 河口 豊2, 3), 石松 昌己2, 3), 田村 昌代2, 3), 平田 早苗3, 4), 大石 智洋3, 5), 寺田 喜平3, 5)

1)川崎医科大学附属病院薬剤部
2)同 中央検査部
3)同 院内感染対策室
4)同 看護部
5)同 小児科

要旨

 Vancomycin hydrochloride(VCM)の治療薬物モニタリング(Therapeutic drug monitoring:TDM)は安全で有効な薬物療法を行うために重要な薬剤師の業務であるが,予想外に高いトラフ値になる症例を経験する。2014年2月から2016年6月に川崎医科大学附属病院におけるVCMのTDM実施患者において,7日間以上投与したトラフ値が25 μg/mL以上(高値群)と10 μg/mL以上20 μg/mL未満(目標値群)の患者について調査した(ともに小児患者,透析患者は除外した)。この期間において高値群は28名,目標値群は101名であった。単変量解析では腎機能悪化,投与終了後Creatinine clearance(Ccr),フロセミド,胸水,投与終了後Creatinine(Cr),TDMシミュレーション率,投与期間,アミノグリコシド系薬,腎機能悪化に影響を及ぼす薬剤の併用,年齢で有意差を認めた。多重ロジスティック回帰分析では,統計学的に有意な因子は,「フロセミド」p=0.00027(オッズ比10.5),「アミノグリコシド系薬」p=0.01(オッズ比7.40)であった。トラフ値に影響を与える要因としてフロセミドが特に重要でフロセミド使用患者は薬物動態も考慮してTDMを実施し,シミュレーションソフトを利用したTDMに頼るだけでなく,今回の研究を基に,フロセミドのような利尿薬使用時には頻回の血中濃度測定とともに早期に投与量の再相談をしてもらうように改善した。

Key word

vancomycin hydrochloride, trough value, risk factor, therapeutic drug monitoring, furosemide

別刷請求先

岡山県倉敷市松島577

受付日

2017年12月28日

受理日

2018年7月19日

日化療会誌 67 (1): 51-56, 2019