Vol.67 No.3 May 2019
総説
天然物からの次世代新規抗生物質の探索
1)微生物化学研究会微生物化学研究所第2生物活性研究部*
2)同 創薬化学研究部
要旨
微生物化学研究所(微化研)は,1957年の梅澤濱夫博士によるkanamycin1)の発見を契機に創設された研究所である。爾来,本研究所は天然物創薬を事業の柱として活動を行っており,bekanamycin(kanamycin B)1,2),dibekacin3),arbekacin4),josamycin5,6)などの抗菌薬やbleomycin7)などの抗がん薬を世に送り出して来た。
微化研では創立時より収集してきた放線菌などの土壌細菌約45,000株をはじめ糸状菌や冬虫夏草など計50,000株以上の有用微生物を保有し,現在も新しい微生物資源を収集している。その抽出物による微生物ライブラリーを常時12,000種以上保管し,また単離した天然物を中心とした化合物ライブラリーを約50,000種保有しており,これらのライブラリーを活用することで感染症領域を中心とした天然物創薬研究を推進している。本総説では,最近発見した幾つかの魅力的な天然物を概説するとともに,現在進められている天然物由来の超多剤耐性結核薬CPZEN-45の発見と開発,ならびに超多剤耐性グラム陰性菌に有効な抗生物質TS3112の創製など,微化研における天然物創薬研究について紹介する。
Key word
antimicrobial resistance, natural product, antibiotics, CPZEN-45, TS3112
別刷請求先
*東京都品川区上大崎3-14-23
受付日
2018年9月26日
受理日
2018年11月15日
日化療会誌 67 (3): 308-323, 2019