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書誌情報

Vol.67 No.3 May 2019

総説

ClostridioidesClostridiumdifficile感染症治療薬の最新知見

森 伸晃

国立病院機構東京医療センター総合内科・感染症センター

要旨

 2000年以降ClostridioidesClostridiumdifficile感染症(CDI)は欧米を中心にその罹患率や死亡率の高さから問題となり,医療関連感染症として問題となっている。これまでCDIの治療薬は,metronidazole(MNZ)とvancomycin(VCM)の2薬剤だけであったが,近年新規抗CDI薬や非薬物療法である糞便移植療法(FMT)など新規治療法の開発や臨床試験が行われるようになり,その成果が報告されている。わが国では,この1年間でfidaxomicin(FDX)とbezlotoxumabの2薬剤が新たに販売承認された。第3の抗CDI薬としてすでに欧米で使用されているFDXは,RNAポリメラーゼによる転写を阻害することにより効果を発揮するマクロサイクリック抗菌薬である。芽胞形成抑制効果を認め,臨床試験ではVCMと比較して治療効果は非劣性で,再発率の低いことが報告されている。またトキシンBに対するヒトモノクローナル抗体であるbezlotoxumabは臨床試験においてプラセボに比べて再発率が低いことを示した。またその他にも現在cadazolid,surotomycin,ridinilazole,ramoplanin,LEF571,CRS3123など複数の新規抗CDI薬の臨床試験が行われている。これらの薬剤は共通して経口抗菌薬であり,腸管からはほとんど吸収されず腸管内で高濃度に達するという特徴を有している。さらに近年FMTが良好な治療成績をあげていることからRBX2660やSER109などの生菌を利用した薬剤の有用性も報告されている。これらCDIに対する新規治療法の確立は待たれるところであるが,その一方でわが国のCDIに関する疫学データは不十分であり,実際にどのような治療が行われ,その治療成績がどうなのかはよくわかっていない。そのため新規治療法も含めて今後どのような治療戦略をたてていくかということについては議論していく必要がある。

Key word

ClostridioidesClostridiumdifficile, antimicrobial agent, fidaxomicin, bezlotoxumab

別刷請求先

東京都目黒区東が丘2-5-1

受付日

2018年9月18日

受理日

2018年11月28日

日化療会誌 67 (3): 324-330, 2019