Vol.67 No.3 May 2019
総説
カイコモデルを利用した新規抗菌・抗真菌薬の同定と開発
帝京大学医真菌研究センター*
要旨
多剤耐性菌の蔓延に対抗するために,新規抗微生物薬の開発が切望されている。また,真菌感染症に対しては,臨床で利用できる抗真菌薬の種類が限られており,医療上のニーズを満たしていない。しかしながら,いずれにおいても新しいメカニズムを有する抗菌・抗真菌薬の開発は非常に限られている。われわれは,治療効果を指標とした探索系が抗菌・抗真菌薬の同定に有用であると考え,カイコを利用した細菌・真菌感染モデルを用いた抗微生物薬における治療効果の評価系を確立した。これまでに,このカイコ感染モデルでの治療効果を指標とした探索により,新規メカニズムを有する抗菌・抗真菌薬の同定に成功している。本総説では,創薬におけるモデル動物としてのカイコモデルの利点について解説するとともに,これまでに得られている新規抗菌・抗真菌薬の開発における成果を紹介する。
Key word
antibiotics, antifungal agent, MRSA, pharmacodynamics
別刷請求先
*東京都八王子市大塚359番地
受付日
2018年9月1日
受理日
2018年12月10日
日化療会誌 67 (3): 331-337, 2019