Vol.67 No.3 May 2019
総説
カンジダ血症の臨床的問題点
1)杏林大学総合医療学教室*
2)杏林大学付属病院薬剤部
3)同 臨床検査部
要旨
カンジダ血症は高い死亡率を呈し,高齢者や免疫抑制患者における日和見感染症としてきわめて重要な疾患である。これまでカンジダ血症の原因菌としてはCandida albicansが大勢を占めていたが,近年の傾向ではnon-albicans Candidaが増加傾向にある。これらに対する抗真菌薬の選択基準が必要となり,2008年にClinical and Laboratory Standards Institute:CLSIによる,各Candida spp.に対するbreakpointが提示された。またこの10年間で米国,欧州あるいは本邦でもガイドラインの発表と改訂がなされ,菌種同定と薬剤感受性試験を積極的に実施し,その情報をもとに抗真菌薬を選択することが推奨されている。C. glabrataなどfluconazole(FLCZ)に耐性傾向が強い菌種には,忍容性からmicafungin(MCFG)が推奨されるが,FKS遺伝子変異によりMCFGに耐性を獲得したC. glabrataの出現など,あらたな薬剤耐性菌が出現しており,今後治療上の問題となる可能性も考えられる。
また治療に難渋する原因としてカテーテル,ステントなどの血管内デバイスへのbiofilm形成が挙げられる。さらに眼内炎の発症は,患者のQOLに強くかかわってくる合併症であるとともに,治療を複雑化する要因となっている。これら薬剤耐性菌やbiofilm対策および合併症の予防を含めた総合的な治療戦略が求められている。
Key word
candidemia, non-albicans Candida, resistance, endophthalmitis, mortality
別刷請求先
*東京都三鷹市新川6-20-2
受付日
2018年10月18日
受理日
2018年12月10日
日化療会誌 67 (3): 338-347, 2019