ページの先頭です
ホーム > バックナンバー > 目次 > 書誌情報
言語を選択(Language)
日本語(Japanese)English

書誌情報

Vol.67 No.3 May 2019

総説

薬物血中濃度の理解と応用

小林 義和1), 篠崎 公一2)

1)北里大学北里研究所病院薬剤部
2)北里大学薬学部臨床薬学研究・教育センター臨床薬学大講座薬物動態学

要旨

 北里大学北里研究所病院(以下,当施設)では,Therapeutic Drug Monitoring業務における薬物動態解析に,OptjpWin Spreadsheet(OptjpWinS)を用いている。OptjpWinSには,Population Pharmacokinetic(PPK)パラメータが組み込まれており,感染症領域ではバンコマイシン(VCM),テイコプラニン(TEIC),アミノグリコシド系抗菌薬(AGs)の初期投与設計が可能である。また,患者のPharmacokinetic(PK)パラメータの推定では,通常最小二乗法とPPKパラメータを用いたベイジアン法が利用でき,後者では測定値の重みづけが異なる2つの解析法がある。VCMは,当施設の患者より得られた血中濃度からPPKモデルを構築し,OptjpWinSに組み込んで臨床応用している。VCMのPPKモデルは再構築を繰り返しているが,2015年に既存モデルの予測精度が不十分と判断したため,2017年に新規モデルを構築した。これまでの検討から,クレアチニンクリアランスとそこから導かれるVCMクリアランスの推定精度が,VCM血中濃度の予測性に影響していると考えられる。TEICとAGsは,それぞれ文献のPPKモデルを利用している。TEICは,2-コンパートメントモデルを1-コンパートメントモデルに近似して利用しているため,臨床応用の際は採血のタイミングに注意を払う必要がある。一方,当施設では臨床試験としてニューキノロン系薬やメロペネムの血中濃度測定を実施し,投与計画に反映している。有効性を確保したい広域抗菌薬使用の際に,過小投与とならないための必要な試みと考えている。普遍的なPPKモデルはなく,抗菌薬TDMガイドラインにより,PKパラメータを介さない投与量調節法が普及している。しかしながら,初期投与設計や特徴的なPKパラメータをもつ患者群の特定において,PPKモデルの構築は有用であり,血中濃度と投与法および臨床効果をつなぐツールとして活用すべきである。

Key word

therapeutic drug monitoring(TDM), antimicrobial agent, population pharmacokinetics, pharmacokinetics/pharmacodynamics(PK/PD), blood concentration

別刷請求先

東京都港区白金5-9-1

受付日

2018年9月12日

受理日

2018年12月25日

日化療会誌 67 (3): 368-375, 2019