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書誌情報

Vol.67 No.3 May 2019

原著・臨床

小児患者におけるテイコプラニン血中トラフ濃度15 μg/mL以上での安全性と負荷投与後のトラフ濃度に対する影響因子の検討

広中 梨沙1), 小阪 直史1), 家原 知子2), 四方 敬介1)

1)京都府立医科大学附属病院薬剤部
2)同 小児科

要旨

 テイコプラニン(TEIC)は広く臨床使用されるグリコペプチド系抗菌薬である。しかし,小児領域においてトラフ濃度15 μg/mL以上での安全性や最適な負荷投与方法に関する検証は未だ十分になされていない。そこで,小児患者におけるトラフ濃度15 μg/mL以上での安全性と,1回量10 mg/kgを12時間間隔で3回の負荷投与後にトラフ濃度15 μg/mL以上への到達率とその影響因子について検証した。
 対象は,2012年1月から2017年3月に京都府立医科大学附属病院においてTEICが投与され,トラフ濃度の測定が実施された2歳以上15歳未満の患児とした。安全性評価では患児78例を対象に,TEICトラフ濃度の最高値が15 μg/mL未満(低トラフ濃度群:LTG)と15 μg/mL以上(高トラフ濃度群:HTG)の2群間での臨床検査値異常の発現率を比較した。負荷投与の検証では患児51例を対象に,10 mg/kg負荷投与後における初回トラフ濃度(TEIC開始日から3~5日目)の高トラフ濃度への到達率とその患者背景を含めた影響因子について調査した。
 TEIC投与後からの臨床検査値異常は,LTG(29例)とHTG(49例)のそれぞれにおいて,Scr(両群に発現例なし),AST(13.8% vs. 14.3%),ALT(20.7% vs. 24.5%),PLT(20.7% vs. 16.3%),WBC(27.6% vs. 26.5%),Hct(13.8% vs. 6.1%)であり,両群の発現率に有意な差を認めなかった。負荷投与例での検証では,トラフ濃度15 μg/mL以上への到達率は45%(23例)あり,未到達の要因となった予測因子は,年齢[オッズ比(OR):1.346;95%信頼区間(CI):1.015~1.654;P=0.005]と好中球数[OR:1.349;95%CI:1.118~1.628;P=0.002]であった。
 われわれの検討において,小児患者にTEICトラフ濃度を15 μg/mL以上に設定することは,血液学的異常値発現の観点から安全であることが示唆された。また,早期にトラフ濃度を15 μg/mL以上に到達させるためには,現在の1回量10 mg/kgを12時間間隔で3回の負荷投与では不十分であり,患児の年齢や発熱性好中球減少症などの病態を考慮した投与レジメンの個別化が求められる。

Key word

teicoplanin, therapeutic drug monitoring, adverse effect, child

別刷請求先

京都市上京区河原町通広小路上ル梶井町465

受付日

2018年5月11日

受理日

2018年11月19日

日化療会誌 67 (3): 376-384, 2019