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書誌情報

Vol.67 No.4 July 2019

総説

TDMガイドラインに基づくボリコナゾール投与時の問題点への薬物動態学的アプローチ

萩原 真生1, 2), 加藤 秀雄3), 横山 優樹3), 塩田 有史3, 4), 柴田 祐一3), 渡邊 弘樹2, 4), 浅井 信博2, 4), 小泉 祐介2, 4), 山岸 由佳2, 4), 三鴨 廣繁2, 4)

1)愛知医科大学分子疫学・疾病制御学寄附講座
2)同 感染症科
3)同 薬剤部
4)同 感染制御部

要旨

 ボリコナゾール(VRCZ)は広域な抗真菌スペクトルを有するアゾール系の深在性真菌症治療薬の一つであり,侵襲性肺アスペルギルス症を含む深在性真菌症患者に対して臨床効果と血中濃度の関連性が認められている。現在,VRCZは薬物治療モニタリング(TDM)の実施可能な唯一の抗真菌薬であり,血中濃度測定結果による用量調節が推奨されている。2016年に発刊された『抗菌薬TDMガイドライン2016』(以下,TDMガイドライン)では,VRCZの有効治療域は,血中トラフ濃度が1.0~2.0 μg/mL以上を推奨しており,血中トラフ濃度が4.0~5.0 μg/mLを超えると視覚障害や肝障害などの発現リスクが高まるとしている。しかし,添付文書やTDMガイドラインに沿って,VRCZを臨床で使用する場合,真菌感染症の種類や感染部位,患者の重症度にかかわらずVRCZの目標血中濃度は一定でいいのかといった問題に対しては依然として疑問が残る。その他にも,VRCZはcytochrome P450の一つであるCYP2C19の遺伝子多型が薬物代謝における変動の主要な決定因子と考えられているが,現状では臨床現場でCYP2C19の遺伝子多型を患者ごとに測定するのは非現実的であり,特にPoor metabolizerが疑われる患者のVRCZの投与設計には難渋することが多々認められる。また,既報によってVRCZによる肝障害の発症率は血中濃度と相関性が多数示されている一方で,本邦でのVRCZ投与症例において,血中濃度と中枢性症状(幻覚・幻視)や視覚障害の関連性に関する報告は依然として限られている。そのため,これらの情報がVRCZを臨床で使用するうえで有用な情報になると考えられる。本稿では,上内容のTDMガイドラインに基づくVRCZ投与時の臨床的な問題点に対して自験例を含め薬物動態学的考察を含めた報告を行う。

Key word

voriconazole, population pharmacokinetics, therapeutic drug monitoring (TDM)

別刷請求先

愛知県長久手市岩作雁又1番地1

受付日

2018年10月29日

受理日

2019年1月29日

日化療会誌 67 (4): 457-465, 2019