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書誌情報

Vol.67 No.4 July 2019

総説

梅毒:その増加の現状と正しい診断・治療について

荒川 創一1), 有馬 雄三2), 大西 真3)

1)三田市民病院
2)国立感染症研究所感染症疫学センター
3)同 細菌第一部

要旨

 日本における性感染症の発生動向調査によると,梅毒が2012年から急増している。感染症法五類届出によると,その増加の程度は,2012年に比し2017年には男性で5.7倍,女性で10.3倍である。1970年に6,138例を記録して以降5,400例を超えた年はなく,1993年からは1,000例未満であったものが,46年ぶりに1971年を上回る5,819例という多数の報告となった。さらに2018年の届出数では7,002例と増え続けている。厚生労働科学研究センチネルサーベイランスの調査成績も梅毒の急増を裏づける結果となっている。この梅毒の急激な増加に際し,医療者は今一度,本疾患の正しい診断・治療の方法について,認識を深めることが必要である。梅毒はthe great imitator(偽装の達人)といわれる。変幻自在な病態をとる本疾患において,典型例はむしろ少ない。無症候の潜伏梅毒を含め,その診断の拠り所はsurrogate markerである血液中の梅毒抗体であるが,自動化法のデータの解釈には明確なエビデンスが乏しい。治療はペニシリンが特効薬であり,第1期,第2期梅毒においては日本ではアモキシシリン500 mg×3/日,4週間投与が基本である。治療により症状消失とともに,梅毒抗体RPRが自動化法では半減することが治癒の目安である。梅毒流行の抑制には正しい診断治療の推進とともに,国民が正しい性感染症予防行動がとれるよう,学会として啓発することも肝要である。

Key word

syphilis, epidemiology, diagnosis, treatment

別刷請求先

兵庫県三田市けやき台3丁目1番地1

受付日

2018年10月18日

受理日

2019年2月12日

日化療会誌 67 (4): 466-482, 2019