Vol.67 No.5 September 2019
原著・臨床
メロペネム投与5日目および14日目の2時点に対する抗菌薬適正使用支援チームの介入効果
1)聖路加国際大学聖路加国際病院薬剤部*
2)同 感染症科
3)同 臨床検査科
4)同 QIセンター感染管理室
要旨
近年,多剤耐性菌が問題になっており,antimicrobial stewardship team(AST)の活動により抗菌薬感受性率改善や入院期間が短縮したという報告がある。当院では,カルバペネム系抗菌薬で唯一の採用薬であるメロペネム(MEPM)について2010年6月から許可制を開始した結果,緑膿菌のMEPM感受性率が上昇した。しかし,近年は緑膿菌のMEPM感受性率が低下してきたことから,前向きフォローとフィードバックを目的としたAST活動を2016年8月から開始した。ASTは,MEPMを開始して5日目と14日目に適切性を評価して主治医に提案を行った。この新たなASTの方策による効果を検討した。
2013年4月から2017年9月にMEPMが投与された患者を対象とし,後方視的診療録調査を行った。主要評価項目は抗菌薬使用日数の標準的な評価指標days of therapy(DOT;/1,000 bed days)の推移および緑膿菌のMEPM感受性率とした。
延べ介入患者数は232名であった。5日目と14日目の介入回数はそれぞれ205回,83回であった。ASTの提案に対する主治医の採択率は84.4%であった。AST活動開始前の6カ月ごとのDOTは30.0→29.5→32.0→31.4→29.8→30.2→27.2と推移し,開始後からは23.2→25.2と推移した(p=0.065)。緑膿菌の6カ月ごとの感受性率は活動開始前78%→84%→81%→89%→88%→86%と推移し,開始後からは83%→90%→79%と推移した。
今回の検討結果では,許可制に加えて5日目および14日目の2時点への介入とするASTはDOT推移や緑膿菌のMEPM感受性率改善など全体的な指標を改善するにはいたらなかった。しかし,ASTの提案採択率は良好であり,個々の症例に関して治療の最適化へ寄与できることが明らかになった。
Key word
antimicrobial stewardship team, meropenem, days of therapy, antimicrobial use density
別刷請求先
*東京都中央区明石町9-1
受付日
2018年12月10日
受理日
2019年4月24日
日化療会誌 67 (5): 583-590, 2019