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書誌情報

Vol.67 No.6 November 2019

総説

海外渡航関連感染症の現状と対策

渡邊 浩

久留米大学医学部感染制御学講座

要旨

 近年わが国の海外渡航者数は年間1,700万人前後で推移している。一方,訪日外国人旅行者数は急増し,2018年には3,000万人以上となり,以前より海外で流行する感染症が国内に持ち込まれるリスクが高くなっている。近年はエボラウイルス感染症や中東呼吸器症候群(MERS)などの新興感染症の流行や,関西国際空港や沖縄での麻疹集団感染事例もあり,輸入感染症への体制づくりが急がれる。欧米では渡航者の健康問題を扱うトラベルクリニックが数多く設置され,健康指導,ワクチン接種や携帯医薬品の処方などが行われているが,わが国ではトラベルクリニックはまだ十分に普及していない。日本渡航医学会は,2011年よりトラベルクリニックを全国に普及させることを目的としたトラベルクリニックサポート事業を開始し,学会ホームページに掲載されている国内のトラベルクリニックは事業開始前の2011年3月の時点では45施設であったが,2017年10月には107施設と2倍以上になり,徐々に増えてきている。渡航先で感染症に罹患し,国内に感染症が持ち込まれる機会は今後も増加することが予想される。わが国における渡航者を対象としたワクチンの環境整備が向上するとともに,渡航者が事前に渡航地の感染症情報を収集し,必要な感染症対策を準備する習慣をもてるよう啓発していくべきであろう。

Key word

travel clinic, vaccine

別刷請求先

久留米市旭町67

受付日

2018年10月12日

受理日

2019年7月10日

日化療会誌 67 (6): 628-632, 2019