Vol.68 No.1 January 2020
総説
感染性心内膜炎発症予防のための歯科処置時抗菌薬投与の今後―日本循環器学会ガイドライン改訂班の立場から―
1)東北医科薬科大学地域医療学教室*
2)大阪大学大学院機能診断科学
要旨
侵襲的歯科処置時における感染性心内膜炎(IE)予防のための抗菌薬投与は1950年代から行われてきたが,1990年代の欧米のガイドラインではその部分的,全面的な見直しが行われた。本邦のIEガイドラインを改訂するにあたって,1)歯科治療が先行するIEの頻度,2)IEリスクとなる疾患の重みづけ,3)欧米のガイドラインの変更後におけるIE頻度の変化,4)予防的抗菌薬投与の費用対効果,5)医師/歯科医師の間のガイドラインに対する認識,6)予防的抗菌薬投与の副作用についてエビデンスを集め,議論が行われた。その結果,2017年に改訂された日本循環器学会のガイドラインでは,高度リスク群,中等度リスク群共に歯科治療時の予防的抗菌薬投与を推奨することとした。本ガイドラインの英語版がすでに発行されており,新しいガイドラインの周知,検証が望まれる。
Key word
infective endocarditis, dental and oral surgical procedure, antibiotic prophylaxis
別刷請求先
*宮城県仙台市宮城野区福室1-15-1
受付日
2019年3月14日
受理日
2019年8月19日
日化療会誌 68 (1): 116-124, 2020