Vol.68 No.1 January 2020
原著・基礎
Clostridioides difficile検出法と薬剤感受性に関する検討
1)札幌医科大学附属病院検査部*
2)札幌医科大学医学部感染制御・臨床検査医学講座
要旨
毒素産生性Clostridioides difficileの検出には,イムノクロマトグラフィー法(IC法)が汎用されている。C. difficileのbinary toxin産生株や毒素過剰産生株の分離頻度に関する報告は少ない。また,薬剤感受性試験はほとんどの施設で実施されていない。そこで,IC法による毒素産生性C. difficile検出能の評価および各種毒素産生性,薬剤感受性に関する検討を行った。2015年2月~2016年7月に抗菌薬関連下痢症疑いで提出された糞便285検体を対象とした。培養法で50検体(17.5%)からC. difficileが検出され,35株(70.0%)がtoxin A/B陽性であった。培養法を比較対照としたIC法のtoxin A/Bの陽性一致率,陰性一致率は22.9%,99.6%であった。Toxin A,toxin B遺伝子保有株の内訳は50株中A+B+が21株(42.0%),A-B+が14株(28.0%),A-B-が15株(30.0%),binary toxin遺伝子保有株は毒素産生性C. difficile 35株中1株(2.9%),毒素過剰産生株を疑う株はみられなかった。毒素産生性C. difficile 35株のMIC90はpenicillin Gが4 μg/mL,tazobactam/piperacillinが8 μg/mL,metronidazole(MNZ)が2 μg/mL,vancomycin(VCM)が1 μg/mL,fidaxomicin(FDX)が0.12 μg/mLでFDXが最も低かった。IC法は簡便性かつ迅速性に優れているが,毒素検出の感度は十分とはいえない。また,毒素過剰産生株を疑う株やMNZ,VCMやFDXの第一選択薬に対して耐性株は分離されなかったが,今後もC. difficile感染症に対する継続したサーベイランスを実施していく必要があると考えられる。
Key word
Clostridioides difficile, immunochromatography, toxin B, susceptibility, fidaxomicin
別刷請求先
*北海道札幌市中央区南1条西16丁目291
受付日
2019年5月13日
受理日
2019年8月20日
日化療会誌 68 (1): 155-161, 2020