ページの先頭です
ホーム > バックナンバー > 目次 > 書誌情報
言語を選択(Language)
日本語(Japanese)English

書誌情報

Vol.68 No.2 March 2020

総説

Whole genome sequencingによる耐性因子検出

松村 康史1, 2)

1)京都大学医学部附属病院検査部・感染制御部
2)京都大学大学院医学研究科臨床病態検査学

要旨

 Whole genome sequencing(WGS,全ゲノムシーケンス)とは,次世代シーケンサーを用いて微生物のゲノムすべてを短時間で解読する技術であり,近年研究目的での利用が急速に進んでいる。WGSでは,プラスミド・染色体を含むすべての遺伝子配列が得られるため,従来のPCRやマイクロアレイと異なり,検出対象とする遺伝子を検査前にあらかじめ決める必要はない。また,耐性因子だけでなく,菌種,multilocus sequence type,プラスミドタイプ,病原遺伝子等についての情報も同時に得られる。WGS解析の実際の手順としては,次世代シーケンス実施とデータ解析の2つに分けられる。データ解析では,まず得られた生データからde novoアセンブリを行い,draft genomeを作成する。この中から耐性遺伝子の網羅的データベース(ResFinderなど)を利用して耐性遺伝子を検索する。視覚的操作が可能なWebベースの解析システムも利用できる。耐性遺伝子検出から,実際の薬剤感受性を予測する研究が行われており,腸内細菌科細菌では95%の精度で可能という報告もなされている。WGSによる耐性因子検出の課題として,コスト,迅速性,専門知識を有する人材不足に加え,解析技術の限界が挙げられる。耐性遺伝子の周辺構造解析,ゲノム上の位置決定,染色体性耐性機構の網羅的検出は難しく,解析の妥当性を保証する基準や標準化もなされていない。これらの課題を解決するため,多くの資金と人的リソースが投入されており,今後の技術革新や標準化により,WGSによる臨床微生物検査が導入される可能性が期待される。

Key word

whole genome sequencing, next-generation sequencer, resistance gene, drug-resistant bacteria

別刷請求先

京都府京都市左京区聖護院川原町54

受付日

2019年7月2日

受理日

2019年8月29日

日化療会誌 68 (2): 198-203, 2020