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書誌情報

Vol.68 No.3 May 2020

総説

難治性呼吸器感染症治療の実際

青島 正大

亀田総合病院呼吸器内科

要旨

 難治性呼吸器感染症に一定の定義はない。しかし,抗微生物薬による薬物治療が治療の主体であることに鑑みれば,薬物治療により軽快・治癒へ導くことが困難な呼吸器感染症と位置づけることができ,その要因は宿主側と微生物側および治療薬剤側の3つに大別できる。
1.宿主側の要因 
 肺実質,気管支の構造破壊を示す嚢胞・空洞や気管支拡張の存在,あるいは肺膿瘍や膿胸によって抗菌薬の病巣への移行が不良であるため,薬物治療に加え,ドレナージなどの物理的治療や外科的切除を積極的に考慮する姿勢が必要となる。特に免疫不全宿主では広く原因微生物を考慮する必要があり,これらの呼吸器感染症では胸部画像所見が病原推定のヒントになるが,網羅的検査・治療が必要な場合も少なくない。また,血液疾患患者の侵襲性肺真菌症では血小板減少などのために侵襲的呼吸器検体採取が困難であることが多い。
2.微生物側の要因
 薬剤耐性のほか,標準的治療薬剤が確立されていない微生物も数多く存在する。薬剤感受性検査法が複数ある場合にこれらの間で判定結果の差異がみられることがあり,治療薬選択に悩む要因となる。糸状真菌は培養による菌種同定が容易ではなく,組織検体からの形態学的診断によらなければならない場合も多い。
3.治療薬剤側の要因
 慢性の感染症である慢性進行性肺アスペルギルス症やMycobacterium abscessusなどは薬物治療中止の時期に一定の基準がない。
4.感染症治療以外の対応が必要な続発症
 感染性仮性動脈瘤や有瘻性膿胸など薬物治療以外の特別な対応が必要となり治療がさらに難しくなる場合がある。
 本総説ではこれらの要因ごとに自験例を提示し,これら難治性呼吸器感染症克服の一つの解答として手術や気管支鏡や血管内治療を併用した集学的治療を提案した。

Key word

interventional radiology, lung abscess, non-tuberculous mycobacteriosis, surgical procedure, thoracic empyema

別刷請求先

千葉県鴨川市東町929番地

受付日

2019年1月9日

受理日

2020年1月27日

日化療会誌 68 (3): 345-359, 2020