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書誌情報

Vol.68 No.4 July 2020

原著・臨床

大学病院における外来経口抗菌薬使用の評価法の探索

釜田 充浩1), 村木 優一2), 緒方 禮紗3), 中野 貴文3), 宮崎 元康1), 萩原 大樹3), 佐藤 啓介3), 森脇 典弘3), 塩塚 昭一3), 緒方 憲太郎3), 戸川 温4), 髙田 徹4), 松尾 宏一1), 神村 英利3), 今給黎 修1)

1)福岡大学筑紫病院薬剤部
2)京都薬科大学臨床薬剤疫学分野
3)福岡大学病院薬剤部
4)同 感染制御部

要旨

 近年,日本では薬剤耐性(AMR)対策の一つとして各医療機関の実施量や販売量に基づく抗菌薬使用が報告されている。これまで入院患者に対する抗菌薬使用の指標には,defined daily dose(DDD)やdays of therapy(DOT)といった使用量や投与日数を在院患者延数で補正した指標が使用されている。しかしながら,医療機関の外来患者に対する抗菌薬使用を評価する指標として何を用いるべきか定かではない。そこで,外来患者に対する抗菌薬使用の指標を探索し,外来での抗菌薬処方の使用理由も調査した。
 本研究は2016年11月から2017年10月までの単一の大学病院での後方視的観察研究であり,外来患者に処方された抗菌薬,使用量,件数,使用理由を調査した。抗菌薬使用の指標として使用量をDDDで除し,外来患者数で補正した値(DOD:DDDs/1,000 outpatients/day)を抗菌薬ごとに算出し処方件数と比較した。
 DODと処方件数における使用頻度は異なっていた。その要因の一つには,実際の1日投与量がDDDよりも低い抗菌薬が73.3%含まれていることが考えられた。また,外来に使用される抗菌薬処方の使用理由において不適切と思われる使用や予防目的での使用割合が34%を占めていたため,外来患者に対する適正使用支援が必要と考えられた。
 本研究により,外来における抗菌薬使用を評価する場合には,使用量に基づいた指標より処方件数で評価したほうが簡便で実際の処方状況を反映することが推察された。本結果はさまざまな角度からAMR対策を検討するうえで有用な情報の一つを提供できることが考えられた。

Key word

oral antibacterial agents, antimicrobial resistance, antimicrobial stewardship, outpatient

別刷請求先

福岡県筑紫野市俗明院1丁目1番1号

受付日

2019年9月26日

受理日

2020年3月11日

日化療会誌 68 (4): 532-538, 2020