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書誌情報

Vol.68 No.5 September 2020

総説

動物におけるClostridioides difficile分離状況とヒトとの関連性

臼井 優

酪農学園大学獣医学群獣医学類食品衛生学ユニット

要旨

 Clostridioides difficileは,ヒトの抗菌薬関連下痢症・偽膜性大腸炎において主要な原因菌である。感染者は治療が困難であり再発することも多く,特に欧米ではその約10%が死にいたるとされ,年間約20,000人がC. difficile感染症(CDIs)により死亡していると推計されており,大きな問題となっている。日本においては欧米ほど重症化することは少ないとされるものの,CDIsが発生している。C. difficileは,健康な動物からも分離され,その分子疫学解析にはPCRリボタイピングという型別方法が広く用いられており,海外では市中感染によるヒト臨床由来株と動物由来株の両方からヒトに対して特に強い病原性を示すリボタイプ078が認められ,重篤なCDIsと動物の関係が示唆されている。そこでわれわれは,日本の動物や動物から派生する食品のC. difficile保有状況とCDIsの関係を明らかにすることを目的として,ワンヘルスの理念に従い研究を展開してきた。結果,日本の健康家畜および伴侶動物もヒトにCDIsを起こし得るC. difficileを保有していること,食品(市販肉や野菜)も低率であるがC. difficileに汚染されていることを明らかにした。本総説では,われわれの研究成果による日本の動物等におけるC. difficileの分布状況について紹介する。

Key word

antibiotic-associated diarrhea, Clostridioides difficile, community acquired infection, One Health

別刷請求先

北海道江別市文京台緑町582

受付日

2020年4月15日

受理日

2020年5月15日

日化療会誌 68 (5): 557-562, 2020