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書誌情報

Vol.68 No.S-1 November 2020

原著・臨床

肝機能障害者におけるlascufloxacinの体内動態

岡上 武1), 島 俊英1), 南 芙美子2), 田中 斉祐3), 高見 史朗4), 間仁田 茂5)

1)大阪府済生会吹田病院消化器内科
2)ダイワ会大和病院内科
3)市立奈良病院消化器内科
4)市立大津市民病院消化器内科
5)杏林製薬株式会社わたらせ創薬センター

要旨

 新規キノロン系抗菌薬lascufloxacin(LSFX)の体内動態に及ぼす肝機能低下の影響と安全性を,Child-Pugh分類による重症度が軽度および中等度の日本人男女の肝機能障害を有する13例(軽度11例,中等度2例)を対象に検討した。被験者には空腹時にLSFX75 mgを単回経口投与後,LSFXならびにその代謝物である脱シクロプロピル体の血漿中濃度を高速液体クロマトグラフ法により測定し,薬物動態解析を実施した。
 肝機能障害が軽度の被験者において,血漿中LSFXは投与後1.31時間で0.862 μg/mL(11例の平均値,以下同様)のピーク濃度に達した後,15.5時間の半減期で消失し,AUCinfは14.4 μg・h/mL,CL/Fは5.77 L/hであった。肝機能障害が中等度の被験者では,血漿中LSFXは投与後0.999時間で1.03 μg/mL(2例の平均値,以下同様)のピーク濃度に達した後,21.5時間の半減期で消失し,AUCinfは18.8 μg・h/mL,CL/Fは4.51 L/hであった。血漿中脱シクロプロピル体は,肝機能障害が軽度および中等度の被験者において,LSFXのそれぞれ1/10~1/5,1/20~1/5の濃度値で推移した。LSFXおよび脱シクロプロピル体の血漿中濃度は,肝機能障害が軽度と中等度の被験者でほぼ同様であり,軽度の被験者に関しては,別試験で得られた健康成人(肝機能正常者)の薬物動態パラメータとも大差ないと考えられた。本試験で認められた有害事象は,投与薬剤との因果関係なしと判断された重症度が軽度の便秘1件のみで,臨床検査,バイタルサインおよび12誘導心電図検査に関して,臨床上問題となる異常変動や異常所見も認められなかった。
 以上の結果から,軽度の肝機能障害者では,LSFXおよび脱シクロプロピル体の血漿中濃度に対する肝機能低下の影響は少なく,LSFXを臨床で使用するにあたり用量の減量などの調整は不要と考えられた。ただし,投与実績が少ない中等度以上の肝機能障害者に使用する場合は慎重に投与すべきと考える。

Key word

lascufloxacin, hepatic failure, pharmacokinetics, clinical trial

別刷請求先

大阪府吹田市川園町1-2

受付日

2019年10月30日

受理日

2020年5月14日

日化療会誌 68 (S-1): 24-31, 2020