Vol.68 No.S-1 November 2020
原著・臨床
健康成人におけるtheophylline血漿中濃度に及ぼすlascufloxacinの影響
1)昭和大学医学部内科学講座臨床感染症学部門*
2)同 薬理学講座臨床薬理学部門
3)杏林製薬株式会社わたらせ創薬センター
要旨
新規のキノロン系抗菌薬lascufloxacin(LSFX)の併用が,経口投与後のtheophylline血漿中濃度に及ぼす影響を,健康成人男性被験者6例を対象として検討した。試験では,1日目から4日目までtheophylline 200 mgを単独で1日2回,次いで5日目から11日目までこれにLSFX 150 mg 1日1回を併用してそれぞれ反復経口投与した。4日目,8日目(併用4日目)および11日目(併用7日目)のtheophylline血漿中濃度を薬物動態解析して,LSFX併用によるtheophylline血漿中濃度の変化を評価した。
4日目,8日目および11日目におけるtheophyllineの平均血漿中濃度は,それぞれ投与後10時間まで8.32~8.98 μg/mL,8.96~9.95 μg/mLおよび9.61~10.5 μg/mLを推移した。また,薬物動態パラメータの平均値はそれぞれ,Cmaxが9.46,10.3および10.8 μg/mL,AUC0-10が87.1,95.8および101 μg・h/mLで,tmaxはいずれも4~5時間の範囲にあった。Theophyllineの平均血漿中濃度は8日目および11日目のほうが4日目に比べ高く,8日目と11日目では11日目のほうがやや高値を示した。両薬剤の併用により,11日目におけるtheophyllineの平均血漿中濃度は4日目に比べてCmaxで14%,AUC0-10では16%増加した。被験者別では,11日目において4例の被験者でCmaxが9~56%,AUC0-10が12~55%増加し,2例の被験者でtheophylline血漿中濃度の変化は認められなかった。本試験のLSFX併用時に認められた有害事象は,好中球数減少の1件のみであり,重症度は軽度であった。
以上の結果から,両薬剤を併用する場合LSFXの投与量調整は不要であるが,その使用にあたってはtheophyllineの血中濃度モニタリングを適切に行うなど,安全性に十分留意すべきと考えられた。
Key word
lascufloxacin, theophylline, drug-drug interaction
別刷請求先
*東京都品川区旗の台1-5-8
受付日
2019年10月30日
受理日
2020年5月14日
日化療会誌 68 (S-1): 32-40, 2020