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書誌情報

Vol.68 No.S-1 November 2020

原著・臨床

副鼻腔炎患者におけるlascufloxacinとlevofloxacinの第III相二重盲検比較試験

黒野 祐一1), 川内 秀之2), 堀 誠治3), 舘田 一博4), 戸塚 恭一5), 浅野 恵6), 鈴木 賢二7)

1)鹿児島大学大学院医歯学総合研究科耳鼻咽喉科・頭頸部外科学
2)島根大学医学部耳鼻咽喉科学教室
3)東京慈恵会医科大学感染制御科
4)東邦大学医学部微生物・感染症学講座
5)大坪会北多摩病院
6)杏林製薬株式会社臨床開発センター
7)尚徳会ヨナハ総合病院耳鼻咽喉科

要旨

 新規キノロン系抗菌薬であるlascufloxacin(LSFX)の急性副鼻腔炎および慢性副鼻腔炎急性増悪患者に対する有効性および安全性を検討することを目的として,levofloxacin(LVFX)を対照とした第III相多施設共同無作為化二重盲検並行群間比較試験を実施した。LSFX群ではLSFX75 mgを1日1回,LVFX群ではLVFX 500 mgを1日1回,いずれも7日間経口投与した。
 主要評価項目である投与終了・中止時の有効率は,LSFX群で84.8%[117/138例(95%信頼区間:77.9~89.8%)],LVFX群で84.6%[110/130例(95%信頼区間:77.4~89.8%)]であり,LVFX 500 mgに対するLSFX75 mgの非劣性が検証された。投与終了・中止7日後の再燃率は,LSFX群で4.5%(5/112例),LVFX群で5.6%(6/107例)であった。
 被験者別の微生物学的効果(陰性化率)は,LSFX群92.3%(60/65例),LVFX群95.5%(64/67例)であった。原因菌別の微生物学的効果(菌消失率)は,グラム陽性菌がLSFX群100.0%(37/37株),LVFX群97.2%(35/36株),グラム陰性菌がLSFX群91.4%(32/35株),LVFX群93.8%(30/32株),嫌気性菌がLSFX群83.3%(15/18株),LVFX群100.0%(21/21株)であった。
 有害事象の発現率はLSFX群で20.0%(28/140例),LVFX群で22.3%(31/139例),副作用の発現率は,LSFX群で5.7%(8/140例),LVFX群で10.1%(14/139例)であった。このうち胃腸障害の副作用発現率は,LSFX群で1例1件(0.7%),LVFX群で8例9件(5.8%)であり,死亡例および重篤な有害事象は,いずれの群でも認められなかった。
 以上の成績より,LSFX75 mgの1日1回投与は,急性副鼻腔炎および慢性副鼻腔炎の急性増悪患者の治療においてLVFX500 mgの1日1回投与と同等の高い有効性と安全性を有し,特に胃腸障害に関してより安全性が高い新規抗菌薬であると考えられた。

Key word

lascufloxacin, sinusitis, controlled study, levofloxacin

別刷請求先

鹿児島県鹿児島市桜ヶ丘8-35-1

受付日

2019年10月30日

受理日

2020年2月25日

日化療会誌 68 (S-1): 68-80, 2020