ページの先頭です
ホーム > バックナンバー > 目次 > 書誌情報
言語を選択(Language)
日本語(Japanese)English

書誌情報

Vol.68 No.S-1 November 2020

原著・臨床

耳鼻咽喉科領域感染症患者におけるlascufloxacinの一般臨床試験―有効性・安全性および組織移行性―

川内 秀之1), 黒野 祐一2), 堀 誠治3), 舘田 一博4), 戸塚 恭一5), 小田島 正明6), 鈴木 賢二7)

1)島根大学医学部耳鼻咽喉科学教室
2)鹿児島大学大学院医歯学総合研究科耳鼻咽喉科・頭頸部外科学
3)東京慈恵会医科大学感染制御科
4)東邦大学医学部微生物・感染症学講座
5)大坪会北多摩病院
6)杏林製薬株式会社臨床開発センター
7)尚徳会ヨナハ総合病院耳鼻咽喉科

要旨

 新規のキノロン系抗菌薬lascufloxacin(LSFX)の耳鼻咽喉科領域感染症患者を対象とした一般臨床試験を実施し,LSFXの有効性および安全性を検討した。対象疾患は中耳炎,扁桃炎および咽頭・喉頭炎とし,LSFXとして1回75 mgを1日1回7~14日間経口投与した。また併せて有効性の裏付けとするため,耳鼻咽喉科組織への薬剤移行性を確認した。
 主要評価項目である投与終了・中止時の有効率は全体で90.9%(60/66例),対象疾患別では中耳炎で92.9%(13/14例),扁桃炎で89.3%(25/28例),咽頭・喉頭炎で91.7%(22/24例)であった。副次評価項目である投与3日後の改善率および投与終了・中止7日後の有効率は,それぞれ中耳炎で14.3%(2/14例),100.0%(13/13例),扁桃炎で25.0%(7/28例),84.6%(22/26例),咽頭・喉頭炎で20.8%(5/24例),95.5%(21/22例)であった。
 患者別の微生物学的効果(菌消失率)は全体で98.1%(53/54例),中耳炎で100.0%(7/7例),扁桃炎で96.2%(25/26例),咽頭・喉頭炎で100.0%(21/21例)であり,病態によらずLSFXは検出された原因菌全般に対し高い菌消失率を示した。
 有害事象の発現割合は24.3%(17/70例),治験薬との因果関係が否定できない有害事象の発現割合は8.6%(6/70例)であった。
 またLSFX 75 mg単回投与後の薬剤濃度は,副鼻腔粘膜,中耳粘膜および口蓋扁桃組織のいずれの組織でも組織/血漿濃度比が2を超えており,良好な組織移行性が確認された。
 本検討の結果から,LSFX 75 mg 1日1回投与は,いずれの対象疾患でも高い有効率と菌消失率を示すことが確認され,安全性にも大きな問題は認められなかったこと,またその効果を裏付ける組織移行性が確認されたことから,耳鼻咽喉科領域感染症で有用性の高い薬剤になるものと考えられた。

Key word

lascufloxacin, otolaryngological infection, clinical trial

別刷請求先

島根県出雲市塩冶町89-1

受付日

2019年10月30日

受理日

2020年6月22日

日化療会誌 68 (S-1): 81-95, 2020