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書誌情報

Vol.68 No.S-1 November 2020

原著・臨床

経口用lascufloxacinの母集団薬物動態/薬力学解析

戸塚 恭一1), 高野 順市2), 増田 裕一3)

1)大坪会北多摩病院
2)杏林製薬株式会社わたらせ創薬センター
3)同 臨床開発センター

要旨

 呼吸器および耳鼻咽喉科領域感染症患者でのlascufloxacin(LSFX)の母集団薬物動態(PPK)モデルを構築し,共変量を明らかにすることを目的として解析を実施した。LSFXの血漿中濃度推移は,1次吸収過程を伴う1-コンパートメントモデルにmechanism-based inactivationによるクリアランスの時間依存的変化を考慮した非線形モデルで記述することができた。薬物動態パラメータに大きな影響を及ぼす共変量として,分布容積および全身クリアランスに対する体重が検出された。
 呼吸器感染症患者に対する経口用LSFX 75 mg 1日1回投与の用法・用量の妥当性を評価するため,薬物動態/薬力学(PK/PD)解析を実施した。PPKモデルからLSFXを投与した呼吸器感染症患者の個体別PKパラメータを推定し,臨床分離株のMICを用いてPK/PDパラメータを推定した。原因菌が分離された患者のPK/PDパラメータと微生物学的効果の結果から,有効性のターゲット値はAUC0-24/MIC>15(フリー体AUC0-24/MIC>3.9)と推定された。さらに,実臨床での有効性および耐性菌の発現リスクを予測するため,モンテカルロシミュレーションを用いて各ターゲット値の達成確率を評価した。AUC0-24/MIC>15の達成確率は92.3%であり,主要な原因菌であるStreptococcus pneumoniaeに対する耐性化の評価指標であるCmax/MIC>5の達成確率は98.3%,血漿中トラフ濃度>Mutant Prevention Concentration(Ctrough>MPC)の達成確率は98.6%であった。PK/PD解析の結果は,呼吸器感染症患者に対する経口用LSFX 75 mg 1日1回投与の用法・用量の妥当性を支持するものであった。

Key word

lascufloxacin, population pharmacokinetics, PK/PD

別刷請求先

東京都調布市調布ヶ丘4-1-1

受付日

2019年10月30日

受理日

2020年5月8日

日化療会誌 68 (S-1): 96-108, 2020