Vol.68 No.6 November 2020
原著・臨床
体重に応じたテイコプラニン初期投与設計の有効性と安全性に関する検討
1)京都大学医学部附属病院薬剤部*
2)同 感染制御部
3)同 検査部
要旨
Teicoplanin(TEIC)は血中濃度半減期が長いため,速やかに有効血中濃度に到達させるためには初期の十分な負荷投与が必要である。しかし,その負荷量についての統一された見解は未だ明らかにされていない。本研究では,体重に応じたTEIC投与量が投与開始初期における血中濃度に及ぼす影響を検討した。さらに,投与量および血中濃度が細菌学的効果や副作用発現に及ぼす影響について解析した。
2016年1月から2016年12月の間にTEICの投与を受けた18歳以上の患者のうち,3日目に血中濃度測定を実施した109名を対象とした。体重当たりの投与量により患者を3群(low-dose group:≧10,<20 mg/kg/2 days,n=25,moderate-dose group:≧20,<30 mg/kg/2 days,n=64,high-dose group:30~50 mg/kg/2 days,n=20)に分類した。投与開始3日目の血中濃度は,low-dose group(13.6±8.2 μg/mL)に比べmoderate-dose group(22.7±7.4 μg/mL)およびhigh-dose group(27.6±5.24 μg/mL)で有意に高かった(P<0.01)。さらに,投与3日目の血中濃度測定において目標下限値である15 μg/mLを下回った割合は,low-dose group(52%)に比べmoderate-dose group(20.3%),high-dose group(0%)で有意に低かった(P<0.001)。腎機能障害または肝機能障害が出現した割合については3群間で差は認められなかった。血液培養陽性患者の陰性化までの期間は,初回血中濃度目標到達群(2.5±0.5日)に比べて未到達群(10±8.6日)では有意に短かった(P<0.05)。これらの結果は,早期にTEIC目標血中濃度:15~30 μg/mLを達成するには,一定量ではなく体重に応じて30 mg/kg/2 days以上の投与量が必要であることを強く示唆した。
Key word
teicoplanin, therapeutic drug monitoring, initial dose, body weight
別刷請求先
*京都府京都市左京区聖護院川原町54
受付日
2020年3月4日
受理日
2020年9月7日
日化療会誌 68 (6): 608-618, 2020