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書誌情報

Vol.68 No.6 November 2020

症例報告

ファビピラビルを投与後に軽快したARDS合併SARS-CoV-2肺炎の1例

高橋 秀徳1), 岩﨑 吉伸1), 渡邊 崇靖1), 一ノ瀬 直樹2), 國東 博之3), 小田 智三2)

1)公立昭和病院呼吸器内科
2)同 感染管理部
3)結核予防会複十字病院呼吸器センター呼吸器内科

要旨

 症例は60歳男性。1週間続く発熱,乾性咳嗽を主訴に受診。低酸素血症,胸部単純CTで両側多発性に末梢側優位のすりガラス陰影と浸潤影を認めた。ポリメラーゼ連鎖反応検査が陽性と判明しSARS-CoV-2肺炎と診断した。症状初発より10日経過しており,発熱と頻呼吸が持続し酸素需要が8時間で3 L/分から6 L/分へと増大する状態にあったが経口内服は可能でありファビピラビルを投与した。投与後4時間で呼吸不全はさらに悪化し最大8 L/分の酸素投与を要し挿管・人工呼吸器管理も危惧されたが,酸素需要の増大と頻呼吸はそれ以上悪化することはなく,投与48時間後から解熱傾向となり呼吸状態は快方に転じ酸素投与量も漸減した。投与3日後の胸部単純CTですりガラス陰影を伴う浸潤影と収縮性変化・気管支拡張像を認め,急性呼吸促拍症候群を合併したと考えられた。投与7日後には呼吸数は正常化し解熱したことから改善傾向と判断し他の薬剤による追加治療は行わずに経過をみた。計14日間でファビピラビルを終了し酸素投与も終了した。
 本症例はファビピラビル投与後より進行性の呼吸不全の改善が得られたと考えられたことから,重症例かつ悪化状態にあっても本薬が有効となりうることを示唆する重要な1例と考え報告する。

Key word

COVID-19, SARS-CoV-2, viral pneumonia, favipiravir, acute respiratory distress syndrome

別刷請求先

東京都小平市花小金井8-1-1

受付日

2020年6月5日

受理日

2020年9月3日

日化療会誌 68 (6): 627-631, 2020