Vol.69 No.1 January 2021
症例報告
高度腎機能低下患者に発生したCorynebacterium striatum血流感染の1例
1)広島市立病院機構舟入市民病院薬剤科*
2)広島市立病院機構広島市民病院薬剤部
3)広島市立病院機構舟入市民病院検査科
4)同 看護科
5)同 外科
6)同 感染症科
要旨
グラム陽性桿菌であるCorynebacterium属は,皮膚や上気道の常在菌であるが,日和見感染症,感染性心内膜炎などの原因菌としても知られている。そのため,血液培養から検出された場合は,患者の状態を見ながら,感染源かコンタミネーションかの判断を慎重に行う必要がある。今回,血液培養2セットからCorynebacterium striatumが検出され,患者状態から血流感染と判断した症例を経験した。一般に感染源として外科手術や医療デバイス留置が知られているが,本症例では繰り返し行っていた静脈穿刺による感染が疑われた。また,薬剤感受性試験より多剤耐性であり,さらに患者が高度腎機能低下のため抗菌薬の選択肢が限られていた。抗菌薬適正使用支援チームの介入により,スムーズに適正な抗菌薬の投与を開始することができたが,残念ながら救命にはいたらなかった。免疫低下時や腎機能低下時には,繰り返す静脈穿刺により表皮常在菌の血流感染を起こし,治療に難渋するリスクがあることを認識し,日々の医療行為における感染予防対策を行う必要があると考える。
Key word
Corynebacterium spp., bloodstream infection, teicoplanin, multidrug resistance
別刷請求先
*広島県広島市中区舟入幸町14番11号
受付日
2020年6月24日
受理日
2020年10月12日
日化療会誌 69 (1): 8-12, 2021