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書誌情報

Vol.69 No.2 March 2021

原著・臨床

自己導尿患者の尿監視培養の有用性と無症候性細菌尿の病的意義

桧山 佳樹1), 橋本 次朗2), 髙橋 聡3), 堀田 裕4), 松川 雅則5), 舛森 直哉1)

1)札幌医科大学医学部泌尿器科学講座
2)ていね泌尿器科
3)札幌医科大学医学部感染制御・臨床検査医学講座
4)旭川赤十字病院泌尿器科
5)滝川市立病院泌尿器科

要旨

 清潔間欠自己導尿(CIC)中の患者における監視培養がCIC管理の中で,どのような意義があるかを検討した。
 対象は2013年3月1日から2014年10月31日までの間で,泌尿器科外来へ継続的に通院し,CICを行っている患者とした。診療録および問診より患者背景を調査し,定期受診時に監視培養を行った。発熱や下部尿路症状を有さず,103CFU/mL以上の細菌を認めた場合を無症候性細菌尿(ASB)ありとした。調査開始時およびその後,半年ごとに監視培養を行った。観察期間中の症候性尿路感染症(sUTI)は,38℃以上の発熱あるいは下部尿路症状を有し,細菌定量で103 CFU/mL以上と定義した。
 73症例を組み入れた。観察期間の中央値は13.5カ月であった。観察経過中に新たに認めた症例を含めて62症例(85%)にASBを認めた。分離された細菌は,グラム陰性菌が多く,菌種としてはEscherichia coliを多く認めた。組み入れ時の監視培養と6カ月後の監視培養の結果が完全一致した割合は33.9%であった。6カ月後と12カ月後の一致率は40.3%であった。そのうちE. coliE. coliで合致した割合は57.5%であった。合致したE. coilにおいてキノロン耐性の有無はすべて合致していた。
 観察期間中に尿路感染症を発症した症例は22例33事象であり,0.45事象/人年であった。原因菌が判明した21事象において直近の監視培養が陽性であった事象が11事象であった。尿路感染症の原因菌と監視培養の分離菌が同一であった事象が6事象であり,そのうちE. coliは5事象であった。
 間欠導尿中の患者における監視培養でE. coliが分離された場合,薬剤耐性傾向は維持したまま,継続して分離される可能性があった。監視培養は感染制御やsUTI発症時における抗菌薬選択に寄与すると考えられた。

Key word

clean intermittent catheterization, asymptomatic bacteriuria, surveillance culture, urinary tract infection, drug resistant bacterium

別刷請求先

北海道札幌市中央区南1条西16丁目

受付日

2020年7月6日

受理日

2020年11月20日

日化療会誌 69 (2): 117-122, 2021