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書誌情報

Vol.69 No.2 March 2021

原著・臨床

本邦での壊死性軟部組織感染症の原因菌と初期抗菌薬についての後方視的検討

沖中 友秀1), 岡 祐介2), 浦上 宗治2), 濱田 洋平2), 山口 浩樹1), 青木 洋介2)

1)鹿児島生協病院総合内科
2)佐賀大学医学部附属病院感染制御部

要旨

 NSTI(Necrotizing soft tissue infection;壊死性軟部組織感染症)は緊急かつ致死的な皮膚軟部組織感染症である。初期抗菌薬に広域抗菌薬が選択されることが多いが,広域抗菌薬の慣習的使用は耐性菌の選択を助長する可能性があることから初期抗菌薬を見直すためにNSTIの原因菌と初期抗菌薬について調査した。佐賀大学医学部附属病院において,2011年1月から2018年11月までに壊死性筋膜炎と病名がつけられた入院患者148例について後方視的に検討を行った。そのうち66例を対象に計12項目で評価した。結果は41例(全体の62.1%)が男性で,併存疾患として31例(46.9%)で糖尿病を有していた。感染部位は下肢が32例(48.4%)と最も多く,入院後28日以内に死亡した症例は13例(19.7%)であった。初期抗菌薬としてカルバペネム系薬とtazobactam/piperacillinがそれぞれ17例(25.8%)ずつ選択され,抗Methicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)薬は26例(39.4%)で使用された。創部検体から検出された原因菌はBacteroides fragilisEscherichia coliがそれぞれ14例(21.2%)ずつで最も多く,耐性菌についてはExtended-spectrum β-lactamase(ESBL)産生菌が5例(7.6%),MRSAが8例(12.1%)であった。本研究からこれまでの報告と同様の結果が得られたが,ESBL産生E. coliの市中拡散が懸念された。NSTIの大部分で真に広域抗菌薬を必要とする症例は限られる可能性が示唆され,広域抗菌薬の慣習的使用を見直し適切な抗菌薬選択が行えるようさらなる検討が必要であると考えられた。

Key word

necrotizing soft tissue infection, empiric chemotherapy, diabetes mellitus, anaerobic bacteria, LRINEC score

別刷請求先

鹿児島県鹿児島市谷山中央5丁目20-10

受付日

2020年7月14日

受理日

2020年11月27日

日化療会誌 69 (2): 123-130, 2021