ページの先頭です
ホーム > バックナンバー > 目次 > 書誌情報
言語を選択(Language)
日本語(Japanese)English

書誌情報

Vol.69 No.2 March 2021

症例報告

Cunninghamella sp. による膿胸に対しamphotericin Bを胸腔内投与した1例

上 泰大1), 岡田 淳芳1), 中村 豪志1), 石井 一也1), 大塚 識稔1), 平野 豊2), 鷲尾 一浩2)

1)公立学校共済組合中国中央病院薬剤部
2)同 呼吸器外科

要旨

 症例は69歳男性。右下葉肺癌に対し胸腔鏡下手術(video-assisted thoracic surgery:VATS)を行い,右S10区域を切除した。術後,外来で経過観察していたが,発熱が持続するため入院となった。抗菌薬治療を開始したが症状改善せず,造影CT検査を施行したところ切除周囲の空洞に胸水貯留を認めたためドレーンを挿入した。胸水培養の結果,Cunninghamella sp. が検出されたためliposomal amphotericin B(L-AMB)を2.5 mg/kg/dayで開始するも感染制御は困難で,さらに腎機能障害や電解質異常を認めたためL-AMBの休薬を要した。休薬後,感染が増悪したため外科的処置(病巣部切除,開窓術)を追加するとともにL-AMBを5 mg/kg/dayへ増量したところ胸水中のCunninghamella sp.は陰性化した。増量後7週間継続した時点で感染は制御され疾患は胸腔内に限局的となったが炎症所見は残存したため,胸腔内のamphotericin B(AMPH-B)濃度を十分に満たすことが必要と判断した。またL-AMBを高用量・長期間投与することによる副作用のリスクも考慮し,L-AMB静脈内投与からAMPH-B胸腔内投与に切り替えた。切り替えた後も感染は順調に収束し,治療を完遂させることができた。

Key word

Cunninghamella sp., mucormycosis, thoracic empyema, intrathoracic administration, amphotericin B

別刷請求先

広島県福山市御幸町大字上岩成148-13

受付日

2020年8月11日

受理日

2020年11月20日

日化療会誌 69 (2): 131-136, 2021