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書誌情報

Vol.69 No.4 July 2021

原著・臨床

注射用lascufloxacinの母集団薬物動態/薬力学解析

戸塚 恭一1), 高野 順市2), 増田 裕一3)

1)大坪会北多摩病院
2)杏林製薬株式会社わたらせ創薬センター
3)同 臨床開発センター

要旨

 Lascufloxacin(LSFX)注射剤(以下,本注射剤)の呼吸器感染症患者に対する用法・用量の妥当性を評価するため,母集団薬物動態(PPK)モデルを構築し,薬物動態/薬力学(PK/PD)解析を実施した。
 PPK解析では,ラスビック®錠75 mgのPPK解析で構築した経口投与と静脈内投与の同時解析モデルに,さらに本注射剤第III相試験の結果を加え,PPKモデルを再構築した。その結果,血漿中濃度推移は1次吸収過程を伴う1-コンパートメントモデルにmechanism-based inactivationによるクリアランスの時間依存的変化を考慮した非線形モデルで記述され,主要な共変量は分布容積および全身クリアランスに対する体重であった。モデルの基本構造およびパラメータに影響を与える共変量の種類はラスビック®錠75 mgのPPKモデルと同一であり,パラメータ値も類似していた。
 PK/PD解析では,原因菌が分離された患者のAUC0-24/MIC算出値と微生物学的効果の結果から,本注射剤の有効性ターゲット値はAUC0-24/MIC>15(フリー体AUC0-24/MIC>3.9)と推定された。モンテカルロシミュレーションを用いて算出したAUC0-24/MIC>15の達成確率は投与初日で97.3%,投与7日目で96.9%であった。また,本注射剤の臨床試験で申請適応菌種が検出された被験者において,耐性化抑制の評価指標であるCmax/MIC>8を示す原因菌の割合は87.8%であり,モンテカルロシミュレーションによるCmax/MIC>8の達成確率は投与期間をとおして87.7%以上であった。PK/PD解析の結果は,呼吸器感染症患者に対する本注射剤150 mg(投与初日は300 mg)1日1回投与の用法・用量の妥当性を支持するものであった。

Key word

lascufloxacin, population pharmacokinetics, PK/PD

別刷請求先

東京都調布市調布ヶ丘4-1-1

受付日

2021年1月29日

受理日

2021年3月30日

日化療会誌 69 (4): 305-317, 2021