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書誌情報

Vol.69 No.4 July 2021

原著・臨床

医療情報データベースを用いたインフルエンザ外来患者における再来院および追加処方の実態調査

塩見 朋紀1), 藤原 正和1), 北西 由武1), 宮澤 昇吾1), 米田 卓司2), 宮内 秀之2), 本郷 良泳1), 小倉 江里子1)

1)塩野義製薬株式会社
2)シオノギファーマコビジランスセンター株式会社

要旨

 インフルエンザ感染症の多くは自然治癒するが,重症化する場合があるため,発症後早期に抗インフルエンザ薬を投与することが推奨されている。抗インフルエンザ薬投与後,多くは3日以内に解熱し,1週間程度で完治するが,発熱等の症状の遷延あるいは二次性細菌感染等の合併症により,追加の処置を必要とする場合がある。しかしながら,追加処置の実態についての網羅的な研究は限られている。
 本研究では株式会社JMDCが提供する健康保険組合由来のレセプトデータベースを利用し,追加処置の実態を調査した。データ期間は2018年7月1日から2019年4月30日までとした。本邦で一般的に使用される,ノイラミニダーゼ阻害剤の4剤(oseltamivir,zanamivir,laninamivir,peramivir)およびキャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害剤のbaloxavir marboxil(BXM)を外来処方された患者506,448例における投与後4~8日の再来院と追加処方をアウトカムとし,全体ならびに各薬剤群での発生割合を算出した。各薬剤が投与された患者集団の背景が異なっていたためBXM群を曝露群とし,対照群である他の4群との各組について傾向スコアによる背景マッチングを行ったうえで各アウトカムの発生割合を比較した。
 再来院および追加処方の発生割合は全体でそれぞれ30.9%,17.6%であり,他の年齢層と比較して12歳未満で高い傾向があった。解熱剤や抗菌薬,他の抗インフルエンザ薬の追加処方が実施された患者の割合は全体でそれぞれ1.3%,4.1%,0.1%であった。傾向スコアマッチングによる調整後における再来院および追加処方の発生割合において,BXM群と他の抗インフルエンザ薬群との差は小さく,臨床的に意義のある差は認められなかった。

Key word

influenza, outpatient, medical information data base, baloxavir marboxil, neuraminidase inhibitor

別刷請求先

大阪府大阪市中央区道修町3丁目1番8号

受付日

2020年12月2日

受理日

2021年4月15日

日化療会誌 69 (4): 318-328, 2021