ページの先頭です
ホーム > バックナンバー > 目次 > 書誌情報
言語を選択(Language)
日本語(Japanese)English

書誌情報

Vol.69 No.5 September 2021

原著・臨床

敗血症患者における好中球パラメーターの有用性に関する検討

鳴海 菜月1), 近藤 崇1), 盛合 亮介1), 遠藤 明美1), 淺沼 康一1), 藤谷 好弘2), 高橋 聡1, 2)

1)札幌医科大学附属病院検査部
2)札幌医科大学医学部感染制御・臨床検査医学講座

要旨

 われわれは,敗血症患者における好中球パラメーターの有用性を明らかにするために検討を行った。好中球パラメーターは,多項目自動血球分析装置XN-20,血液像の塗抹染色は塗抹標本作製装置SP-50を用い,XN-20で算出される6つのNE-WX,NE-WY,NE-WZ,NE-SSC,NE-SFL,NE-FSCを対象とした。健常者群と敗血症群の各好中球パラメーターの値を比較した結果,6種類の好中球パラメーター(NE-WX,NE-WY,NE-WZ,NE-SSC,NE-SFL,NE-FSC)すべてにおいて,有意差が認められた。敗血症群をDIC発症群と非発症群に分類し,各好中球パラメーターの値を比較した結果,NE-WZはDIC群で有意に高かった。敗血症を識別するためのROC曲線解析では,Area Under the CurveがNE-WYとNE-SFLで0.995と高度に正確性を有していた。また,ロジスティック回帰分析を行ったところNE-WY,NE-SFL,NE-FSCが有意な変数として抽出された。血液像との関連性を確認するために,NE-WYとNE-SFLが高値であった敗血症群2例と,健常者群2例の血液像を比較した結果,敗血症群の好中球の大きさは18~20 μmとやや大きな細胞が多く,細胞質には粗大な中毒性顆粒がみられた。そこで,NE-WYとNE-SFLが臨床で利用可能か確認するため,併行精度と経時安定性を検討し,両者共に良好であることを確認した。さらに菌血症群や感染症群との鑑別が可能か否か調べるために,健常者群と敗血症群に,菌血症群,感染症群を加えた4群のNE-WYとNE-SFLを比較したところ,両者共に敗血症群と菌血症群,感染症群の間では有意差を認めなかった。
 好中球パラメーターを指標として感染症診療において敗血症を特異的に診断することは難しいが,迅速性の面で敗血症診断において補助的検査となる可能性がある。敗血症診断の特異度を高めるために,臨床背景や他の検査結果,好中球パラメーターの組み合わせなどを組み入れた診断アルゴリズムの検討が今後必要である。

Key word

sepsis, blood culture, neutrophil parameters, DIC

別刷請求先

北海道札幌市中央区南1条西16丁目291

受付日

2021年1月19日

受理日

2021年5月24日

日化療会誌 69 (5): 367-375, 2021