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書誌情報

Vol.69 No.5 September 2021

原著・臨床

2018年における病院薬剤師を対象とした抗菌薬使用量サーベイランスの現状把握調査

田中 知佳1), 日馬 由貴1), 村木 優一2), 石金 正裕1, 3), 早川 佳代子1, 3), 大曲 貴夫1, 3)

1)国立国際医療研究センター病院国際感染症センターAMR臨床リファレンスセンター
2)京都薬科大学臨床薬剤疫学分野
3)国立国際医療研究センター病院国際感染症センター

要旨

 背景:薬剤耐性(AMR)対策アクションプランでは,各医療機関における抗微生物薬の使用量(Antimicrobial Use:AMU)を把握するための動向調査手法を開発することが方針の一つとして示されている。しかし,各医療機関でどのようにAMUを集計しているか,薬剤師にとってAMU集計がどの程度の負担となっているかなど,具体的な問題点は2018年時点で明らかになっていなかった。そこで,2018年に行ったアンケート調査結果を用いて,当時の各医療機関におけるAMU集計の実態を調査した。
 方法:日本病院薬剤師会と日本感染症教育研究会のメーリングリストを利用し,無記名のWebアンケート調査を行った。施設の背景による状況を比較するため,感染防止対策加算1を取得している施設に勤務している回答者(加算1)と,感染防止対策加算2を取得している施設に勤務している回答者(加算2),加算を取得していない施設に勤務している回答者(加算なし)に分け,それぞれの質問に対する回答を比較した。
 結果:加算1の施設に所属する104名,加算2に所属する49名,加算なしに所属する14名から回答を得た。AMUの集計は全体の98.8%で薬剤師が行っており,各群の約70%で1名のみで行われていた。AMU集計を時間外業務として行っていた施設が,加算1の施設で54.8%,加算2の施設で44.9%,加算なしの施設は21.4%でみられた。AMU集計を月1回以上行っている施設は,各群で約80%にみられた。集計に保険請求情報を利用していると回答した施設は,加算1の施設で31.7%,加算2の施設で34.7%,加算なしの施設では0%であった。AMU集計の結果を活用していると答えたのは加算1の施設で89.4%,加算2の施設で79.6%,加算なしの施設では64.3%であった。
 結論:各施設群ともAMU集計に対する薬剤師の負担は大きく,既存のファイルを利用した集計方法の普及など,負担を減らすための対策が求められる。また,特に加算1以外の施設においては,AMUの結果を活用するための支援が必要であると考えられた。

Key word

antimicrobial, antimicrobial resistance, questionnaire, surveillance

別刷請求先

東京都新宿区戸山1-21-1

受付日

2021年2月17日

受理日

2021年7月14日

日化療会誌 69 (5): 376-382, 2021