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書誌情報

Vol.69 No.6 November 2021

症例報告

低体重な血液透析患者において非常に高いセフトリアキソン血中濃度を認めた抗菌薬関連脳症と考えられる1例

内田 裕之1), 坂口 隆志2), 本郷 偉元3), 篠田 こずえ4), 田代 渉4), 松元 一明4), 佐村 優5), 加藤 智之6), 関口 愛1), 中島 美治1), 満田 正樹1), 河井 良智1)

1)関東労災病院薬剤部
2)同 腎臓内科
3)同 感染症内科
4)慶應義塾大学薬学部薬効解析学講座
5)横浜総合病院薬剤部
6)武蔵野赤十字病院薬剤部

要旨

 われわれは第3世代セファロスポリン系抗菌薬であるセフトリアキソン(CTRX)による抗菌薬関連脳症(AAE)を疑う症例を経験した。83歳女性,身長140 cm,体重37 kgの透析患者の菌血症に対して第3病日からCTRX 1日2 gを投与した。第8病日に一過性の意識変調を認め,頭部核磁気共鳴画像法検査を実施したが,有意な所見はなかった。第14病日に再びGlasgow Coma Scale(GCS)E1V1M1の意識障害を認めた。感染症,ビタミン欠乏症,てんかん発作などの可能性とともに,CTRXによるAAEの可能性を考え,CTRXの投与を中止した。第16病日の脳波は徐波化に加えて三相波の混入を認めたが,第23病日には高振幅徐波は完全消失した。その後の検査で,第8病日のCTRXトラフ血中濃度は1,077.6 μg/mLと非常に高い値であった。CTRX血中濃度の低下とともに,意識レベルは改善したが,投与中止から6日を要した。非常に高い血中濃度の原因は,高度腎機能障害患者であること,低効率な透析条件による排泄低下の可能性があること,低体重な患者に相対的に高投与量を継続投与したことが考えられた。このような特徴を有する患者においては,投与量設定に注意し,AAEを疑った際には血中濃度測定を含めた適切な検査を実施して,早期対応に努める必要性が示唆された。

Key word

ceftriaxone, antibiotic-associated encephalopathy, hemodialysis, low-body-weight

別刷請求先

神奈川県川崎市中原区木月住吉町1-1

受付日

2021年7月1日

受理日

2021年9月22日

日化療会誌 69 (6): 433-439, 2021