Vol.69 No.6 November 2021
短報
新潟県診療所医師を対象とした風邪症候群に対する経口抗菌薬適正使用の意識調査
1)新潟薬科大学薬学部臨床薬学研究室*
2)新潟大学大学院医歯学総合研究科呼吸器・感染症内科学分野
要旨
薬剤耐性(Antimicrobial Resistance:AMR)が世界的に問題となっており,抗微生物薬適正使用が重要視されている。そこで新潟県診療所医師を対象として,風邪症候群に対する抗菌薬適正使用の意識調査を実施し,1,238カ所のうち442カ所から有効回答を得た(回収率35.7%)。風邪症候群に対する抗菌薬処方割合は70%以上の医師が30%未満であった。患者や家族の抗菌薬希望時には「説明しても納得しなければ処方する」が37.8%で最多であった。さらに,抗菌薬適正使用のために必要な対策および薬剤師に求める対策はどちらも「一般市民への広報・啓発」が約60%,「患者向けパンフレットの作成」が約50%であった。2006年の風邪症候群に対する抗菌薬処方割合は48.3±21.6%と報告があり,約15年で抗菌薬適正使用が進んでいると考えられる。今後さらなるAMR対策推進のために薬局薬剤師の役割は大きく,一般市民や患者に向けた教育が期待されており,まず薬剤師の教育が急務である。また医師との連携も不可欠であるが,連携や連絡が取りにくくAMR対策へ影響があるとの報告もあり,情報共有できる環境整備も必要であると示唆される。
Key word
antimicrobial agent, antimicrobial resistance, appropriate use, surveillance
別刷請求先
*新潟県新潟市秋葉区東島265番地1
受付日
2020年8月7日
受理日
2021年9月24日
日化療会誌 69 (6): 440-444, 2021