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書誌情報

Vol.70 No.1 January 2022

原著・臨床

カンジダ血症における菌種同定および抗真菌薬感受性試験の必要性の検討

永野 裕子1), 堀野 哲也2), 佐藤 萌子1), 矢ヶ部 美也子1), 長谷川 智子1), 河野 緑3), 金子 知由4), 泉澤 友宏4), 吉田 博1)

1)東京慈恵会医科大学附属柏病院中央検査部
2)東京慈恵会医科大学感染制御科
3)同 臨床検査医学講座
4)東京慈恵会医科大学附属柏病院薬剤部

要旨

 カンジダ血症は依然として死亡率が高く,真菌性眼内炎を合併することもあるため,注意すべき血流感染症の一つである。本研究では,カンジダ血症を対象として有効な抗真菌薬の選択における菌種同定検査,抗真菌薬感受性試験の必要性について検討した。2015年4月~2018年3月に東京慈恵会医科大学附属柏病院でカンジダ血症と診断された20歳以上の症例を対象として,患者背景,菌種,抗真菌薬感受性を調査した。対象となった症例は24例で,男性10例(41.7%),年齢の中央値は73歳(21~94歳)であった。真菌性眼内炎はCandida albicans血症を発症した1例で認められ,カンジダ血症発症後30日以内に死亡した症例は7例(29.2%)であった。カンジダ血症の侵入門戸は,カテーテル関連血流感染症が24例中17例(70.8%)と最も多く,死亡した7例で最も多く分離されたのは,C. albicansが7例中5例(71.4%)であった。また,死亡した7例のうち,48時間以内に有効な抗真菌薬を投与されていない症例は5例であった。BD™クロムアガーカンジダ寒天培地と質量分析法による同定結果を比較した結果,BD™クロムアガーカンジダ寒天培地でCandida sp.と判定された3株とCandida glabrataと判定された1株は,質量分析法によりそれぞれCandida parapsilosis,Candida lusitaniaeと同定された。さらに抗真菌薬感受性試験を施行したC. albicans 8株中1株はアゾール系薬に,C. glabrata 3株中1株はミカファンギンに耐性を示した。これらのことから,カンジダ血症において有効な抗真菌薬を選択するためには,菌種同定および抗真菌薬感受性試験による薬剤感受性の確認が重要であると考えられた。

Key word

candidemia, mass spectrometry, drug susceptibility test, identification, appropriate use

別刷請求先

千葉県柏市柏下163番地1

受付日

2021年7月1日

受理日

2021年10月18日

日化療会誌 70 (1): 80-87, 2022