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書誌情報

Vol.70 No.2 March 2022

原著・臨床

肺炎球菌結合型ワクチン導入後のペニシリン感受性肺炎球菌(PSSP)菌血症に対するβ-ラクタム系注射用抗菌薬の投与量と投与期間の検討:肺炎の有無に着目して

大石 博史1), 中嶋 敏紀2), 片山 陽介1), 田中 誠1)

1)国立病院機構小倉医療センター薬剤部
2)同 小児科

要旨

 肺炎球菌結合型ワクチン(PCV)接種歴のある小児に発症した肺炎球菌菌血症に対する抗菌薬の投与量,投与期間と治療アウトカム(30日以内死亡と侵襲性肺炎球菌感染症[IPD,invasive pneumococcal disease]再発)の関係を検討した。本研究は,2015年4月からの5年間で肺炎球菌菌血症を発症したPCV接種歴がある小児を対象とした単施設後方視的観察研究である。
 研究対象は11例であり,10例は基礎疾患がなく,9例が全身性炎症反応症候群(SIRS,systemic inflammatory response syndrome)基準を満たし,発熱から適切な抗菌薬開始までの中央値は1日だった。また,全例で血液培養から検出されたのはペニシリン感受性肺炎球菌のみであり,投与された抗菌薬はすべて感受性が認められたampicillin,cefotaxime,ceftriaxone,amoxicillin,clarithromycinであった。8例に対しては注射用抗菌薬のみが投与され,その他の3例には経口抗菌薬への変更がされていた。SIRSから離脱するまでの中央値は2日であり,30日以内死亡とIPD再発はなかった。肺炎を伴う群は伴わない群と比較して,195.9 mg/kg/day(IQR:152.4~209.1)vs 138.9 mg/kg/day(IQR:100.2~171.6)(P=0.039)と有意に注射用抗菌薬の投与量が高く,投与期間は10.3日(IQR:10.3~11.8)vs 7日(IQR:7~8.2)(P=0.045)と長期であった。
 これらの結果より,基礎疾患がなくPCV接種歴のある小児において,肺炎を伴わない肺炎球菌菌血症に対するβ-ラクタム系注射用抗菌薬の標準投与量で早期に治療開始されれば,投与期間を7日にまで短縮できる可能性が示唆された。

Key word

penicillin-susceptible Streptococcus pneumoniae, bacteremia, antimicrobial therapy, pneumococcal conjugate vaccine, child

別刷請求先

福岡県北九州市小倉南区春ケ丘10-1

受付日

2021年7月20日

受理日

2021年11月15日

日化療会誌 70 (2): 200-209, 2022