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書誌情報

Vol.70 No.3 May 2022

原著・臨床

メチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌によるカテーテル関連血流感染症に対するvancomycin治療の目標トラフ血中濃度についての検討

伊藤 拓1), 小澤 純1), 相馬 まゆ子1), 佐々木 洋一1), 今田 愛也2), 山本 浩史3)

1)天使病院薬剤部
2)北海道科学大学薬学部
3)天使病院外科

要旨

 Methicillin-resistant coagulase negative Staphylococci(MRCNS)感染症は医療関連感染症の原因菌の一つである。治療の第一選択薬はvancomycin(VCM)であるが,VCMのMRCNSに対する定常状態トラフ血中濃度や最小発育阻止濃度(MIC)値に関する報告は少ない。そこで本研究では,当院でMRCNSが起炎菌であるカテーテル関連血流感染症に対してVCM治療が行われた症例を対象として,治療有効群と無効群の2群に分け,VCM定常状態トラフ血中濃度とMRCNSのVCM MIC値が治療効果に与える影響について比較検討した。
 対象35症例中,治療有効群が20症例,無効群が15症例であった。VCMの定常状態トラフ血中濃度は,治療有効群において有意に高値[15.2 μg/mL vs. 12.9 μg/mL(中央値),p=0.042]であった。また,ROC解析を行い,VCMによる治療が有効なVCM定常状態トラフ血中濃度のカットオフ値は10.2 μg/mLと算出された。ロジスティック回帰分析の結果,「VCMの定常状態トラフ血中濃度」と「中心静脈カテーテル抜去」が統計学的に有意な治療有効の独立した因子であった(p=0.043,p=0.013)。一方,VCM MIC値と治療効果との間に有意差は認められなかった(p=0.341)。本研究から,MRCNSのカテーテル関連血流感染症に対する治療を行う際,VCMの定常状態トラフ血中濃度を10.2 μg/mL以上に維持すること,中心静脈カテーテルを抜去することの2つの要因を考慮する必要性が示唆された。

Key word

vancomycin, MRCNS, CRBSI, trough concentration

別刷請求先

北海道札幌市東区北12条東3丁目1-1

受付日

2021年10月6日

受理日

2022年1月14日

日化療会誌 70 (3): 317-325, 2022