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書誌情報

Vol.70 No.3 May 2022

原著・臨床

eGFR 10~40 mL/min/1.73 m2の患者におけるteicoplaninの高用量負荷投与に関する検討

太田 愛子1), 梅村 拓巳1, 2), 伊藤 雄紀1), 武藤 義和2, 3), 山田 哲也1), 市原 利彦2)

1)公立陶生病院薬剤部
2)同 感染制御部
3)同 感染症内科

要旨

 日本化学療法学会と日本TDM学会が共同で出版している『抗菌薬TDMガイドライン2016』では初回のTDMにてテイコプラニンのトラフ値を15 μg/mL以上とするためには一般的な初期投与設計では不十分であるとして,高用量負荷投与の必要性が示されている。しかし腎機能低下患者への初期投与設計における高用量負荷投与の知見は限られていることから,われわれは腎機能低下患者を対象に,テイコプラニンの初期投与設計が初回トラフ値へ与える影響および安全性に関して検討を行った。
 2007年5月から2020年11月までに当院にてテイコプラニンの投与を受けたeGFR10~40 mL/min/1.73 m2の患者を体重あたりによる最初の3日間でのテイコプラニンの総投与量によって,推奨量群(26.8~33.5 mg/kg/3 days)と,高用量群(33.5~50 mg/kg/3 days)とした2グループのいずれかに割り当て,各群の初回トラフ値15 μg/mLおよび20 μg/mLの達成割合ならびに腎機能障害と肝機能障害発現の有無をそれぞれ後方視的に調査した。
 対象は79例であり,年齢76(±9.6)歳,男性60例(75.9%),推奨量群18例(22.8%)であった。初回トラフ値15 μg/mL以上の達成は,推奨量群11例(61.1%),高用量群54例(88.5%)と増加し(P<0.05),初回トラフ値20 μg/mL以上の達成は,推奨量群2例(11.1%),高用量群42例(68.9%)と増加した(P<0.05)。肝機能障害は推奨量群,高用量群それぞれ2例(11.1%),5例(8.2%)に,腎機能障害は3例(16.7%),9例(14.8%)に認められた。
 トラフ値15 μg/mLおよび20 μg/mL以上を目標に投与する場合,腎機能低下患者においては現行のガイドライン推奨の用量よりも高用量にて負荷投与を行うことで,腎機能障害・肝機能障害などの副作用リスクの上昇を伴うことなく早期に必要トラフ値に到達させることが可能であった。

Key word

TDM, teicoplanin, loading dose, renal dysfunction

別刷請求先

愛知県瀬戸市西追分町160

受付日

2021年8月11日

受理日

2022年3月4日

日化療会誌 70 (3): 334-340, 2022