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書誌情報

Vol.70 No.5 September 2022

原著・臨床

小児悪性腫瘍患者における負荷投与後のteicoplanin血中トラフ濃度15 μg/mL以上への到達率およびその影響因子に関する検討

有馬 崇充1, 2), 佐野 智望1, 2), 新藤 実香1, 2), 塩塚 美歌2), 小林 治2), 古川 哲也1), 岩田 敏2)

1)国立がん研究センター中央病院薬剤部
2)同 感染症部

要旨

 「抗菌薬TDMガイドライン2016 Executive summary」(以下,ガイドライン)では,成人におけるteicoplanin(TEIC)の目標トラフ濃度を15 μg/mL以上と示している。しかしながら,小児においては,TEICの初回トラフ濃度を15 μg/mL以上へ到達させるための負荷投与方法に関する検証や,15 μg/mL以上での安全性の検証は十分とはいえない。そこで,小児悪性腫瘍患者を対象に,TEICトラフ濃度15 μg/mL以上での安全性と負荷投与後のトラフ濃度15 μg/mL以上への到達率とその影響因子について検証した。
 2014年4月から2020年3月までに国立がん研究センター中央病院においてTEICが投与され,トラフ濃度測定が実施された15歳未満の入院小児悪性腫瘍患者44例を研究対象者とした。これらをTEICトラフ濃度の平均値が15 μg/mL未満群と15 μg/mL以上群の2群に分類し,安全性評価として臨床検査値異常の発現率を比較した。また,負荷投与の検証では負荷投与後における初回トラフ濃度15 μg/mL以上への到達率およびその患者背景を含めた影響因子について調査した。
 TEIC投与後からのGrade3以上の臨床検査値異常は,15 μg/mL未満群(18例)と15 μg/mL以上群(26例)のそれぞれにおいて,クレアチニン値(両群に発現例なし),AST値(5.6% vs. 3.8%),ALT値(5.6% vs. 3.8%)に異常を認めたが,両群間の発現率に有意な差を認めなかった。負荷投与後のトラフ濃度15 μg/mL以上への到達率は38.6%(17例),未到達の要因となった予測因子は,負荷投与回数(オッズ比:6.93;95% 信頼区間:1.44~33.2;P<0.05)であった。
 TEIC投与早期からTEICトラフ濃度15 μg/mL以上に達するためにはガイドラインに推奨される方法よりも多くの負荷投与が必要であると考えられた。

Key word

teicoplanin, child, oncology, TDM

別刷請求先

東京都中央区築地5丁目1-1

受付日

2022年1月27日

受理日

2022年6月15日

日化療会誌 70 (5): 387-395, 2022