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書誌情報

Vol.70 No.5 September 2022

短報

血液透析患者におけるvancomycin透析除去率の検討

熊木 雄一1), 荒岡 秀樹2), 田村 宏美1), 林 昌洋1), 澤 直樹3), 伊藤 忠明1)

1)国家公務員共済組合連合会虎の門病院薬剤部
2)同 臨床感染症科
3)同 腎センター

要旨

 Vancomycin(VCM)は血液透析(hemodialysis,HD)で一部が除去され,至適血中濃度維持のためにはHDによるVCM除去率を考慮した投与設計を行う必要がある。われわれは現在国内の臨床で用いられているダイアライザーの機能分類をふまえたHDによるVCM除去率を検討した。
 2010年10月から2011年9月に虎の門病院において,注射用VCMを使用し,HD前後に血中濃度を測定した患者を対象に,VCM除去率を後方視的に調査した。VCM除去率(%)は100×[HD直前血中濃度-HD終了4時間後血中濃度]/HD直前血中濃度(μg/mL)で算出した。
 対象は19名(男性14名,女性5名)で,年齢は平均67.6歳,HD時間は平均3.7時間,血液流量は平均168.9 mL/min,膜面積は平均1.39 m2であった。
 全19症例でのVCM除去率は22.9±8.2[8.8~42.6](平均±標準偏差[最小~最大])%であった。ダイアライザーの機能分類別のVCM除去率は,IV型(16症例),V型(3症例)において,それぞれ21.6±7.2[8.8~32.7]%,29.7±11.7[19.7~42.6]%であった。
 すべての症例においてHD前後の血中濃度測定が困難である現状を考慮すると,一定の範囲内での予測根拠を提示しうるデータと考えられた。しかし,ダイアライザーのタイプ,HD導入からの期間によって,VCM除去率にはばらつきがあることもわかった。

Key word

vancomycin, hemodialysis

別刷請求先

東京都港区虎ノ門2-2-2

受付日

2021年12月7日

受理日

2022年6月10日

日化療会誌 70 (5): 396-401, 2022