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書誌情報

Vol.70 No.6 November 2022

原著・臨床

耳鼻咽喉科領域におけるlascufloxacinの組織移行性の検討(LSPOT study)

鈴木 賢二1), 森 美由紀2), 菊池 智3), 石川 恭行3)

1)ヨナハ丘の上病院耳鼻咽喉科
2)同 薬剤科
3)杏林製薬臨床開発センターメディカルアフェアーズ

要旨

 新規の経口キノロン系抗菌薬であるlasucufloxacin(LSFX)の耳鼻咽喉科領域における組織移行性を評価するため,耳鼻咽喉科手術により副鼻腔粘膜(上顎洞粘膜,篩骨洞粘膜),中耳粘膜または口蓋扁桃組織を摘出する患者を対象として,組織内濃度が高くなると考えられる投与4時間後の組織内および血漿中のLSFX濃度を測定し,組織移行性を確認した(臨床研究実施計画番号:jRCTs031200219)。
 主要評価項目であるLSFXの組織内濃度は副鼻腔粘膜,中耳粘膜および口蓋扁桃組織でそれぞれ1,322.0±373.9,873.8±282.3および1,303.4±371.0 ng/g,血漿中濃度は採取組織別に657.6±209.5,514.8±107.8および513.0±132.1 ng/mLであり,組織内濃度は血漿中濃度より高かった。組織内/血漿中濃度比は採取組織別に2.04±0.32,1.66±0.24および2.53±0.21であった。本研究の実施と因果関係が否定できない有害事象の発現は認められなかった。
 LSFX錠75 mg投与4時間後における組織内濃度は,先行試験における投与1.5時間値(1.5±0.5時間)の1.6~5.0倍でより高い濃度が確認された。この投与4時間後の組織内濃度は,LSFXの耳鼻咽喉科感染症主要原因菌に対するMIC90の10倍超であった。また,LSFXは投与1.5時間および4時間後において,組織内/血漿中濃度比は概ね2以上を示した。耳鼻咽喉科領域におけるLSFXの良好な組織移行性は,耳鼻咽喉科領域感染症において主要原因菌の耐性化が進行している現状において有用な薬剤であることを裏づけたものである。

Key word

lascufloxacin, otorhinolaryngological infection, tissue penetration

別刷請求先

三重県桑名市さくらの丘1番地

受付日

2022年8月5日

受理日

2022年10月3日

日化療会誌 70 (6): 445-452, 2022