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書誌情報

Vol.71 No.1 January 2023

原著・臨床

COVID-19症例における抗菌薬投与と喀痰培養検査についての検討(単施設研究)

山口 泰輝1), 八板 謙一郞2)

1)千鳥橋病院総合内科
2)同 感染症科

要旨

 Coronavirus disease 2019(COVID-19)と呼吸器細菌感染の合併についてまとめた国内での報告は少ない。本研究ではCOVID-19症例から提出された喀痰培養検査を解析することで,合併する呼吸器細菌感染症について後ろ向きに検討を行った。研究対象は2020年4月1日から2021年9月31日までに,当院にCOVID-19として入院した133例であった。喀痰検査前に抗菌薬を投与されていた症例は除外した。後ろ向きにカルテを参照し,年齢,性別,重症度,基礎疾患,Miller&Jones分類,Geckler分類,細菌培養結果,抗菌薬使用の有無,血算・生化学検査について検討した。研究対象となった133例のうち,52例で抗菌薬投与が行われていた。重症例ではほぼ全例に抗菌薬が投与されており(13/14),抗菌薬投与例の多く(45/52)でセフトリアキソンが選択されていた。さらに全症例の中で喀痰検査が行われていたのは45例であり,Normal floraを除外し同定された細菌はStaphylococcus aureus 15例,Streptococcus constellatus ssp. constellatus 3例,MoraxellaBranhamella catarrhalis 2例,Pseudomonas aeruginosa 2例などであった。S.aureusが検出された15例のうち,methicillin-susceptible S.aureus(MSSA)は12例,methicillin-resistant S.aureus(MRSA)は3例だった。MSSAが検出された患者のうち,5例は抗菌薬投与することなく軽快し,MRSAが検出された全患者も抗MRSA薬未投与で軽快した。COVID-19において喀痰培養が陽性だったとしても,抗菌薬投与を行わずに良好な転帰を得られる場合がある。本研究の結果からはCOVID-19患者全例への抗菌薬投与を行うことを支持せず,背景疾患や経過,重症度など症例特性を鑑みて抗菌薬投与の適応を検討すべきであると考えられた。

Key word

COVID-19, bacterial infection, antimicrobial agents, sputum culture

別刷請求先

福岡県福岡市博多区千代5丁目18-1

受付日

2022年1月21日

受理日

2022年11月4日

日化療会誌 71 (1): 91-98, 2023